クリスマスを一緒に過ごす。
この厳かで華やかで楽しいお祝いを、長く一緒に楽しめるのは、子育てのよろこびのひとつではないでしょうか。
クリスマスやサンタさんのことが気になってくる、2、3歳の小さな子から楽しめる絵本をご紹介します。
季節の絵本は、毎年繰り返して読むことができることが、よさのひとつ。ここでは、2、3歳のうちだけではなく、それからも長く読み続けていくことのできる絵本を選んでいます。
子どもとクリスマスを過ごすために「クリスマスってなあに?」
お父さんお母さんがクリスマスをもっと知ると、もっとこの日が好きに、たのしみになります。そのために、まずはこの絵本。
朱色がかった赤い表紙に、ノスタルジックなイラストがいかにも古き良き時代の子どもの本らしい、この1冊。アメリカで1946年に出版された絵本です。
クリスマスのはじまりから、カードやプレゼント、料理、賛美歌、サンタクロース・・・クリスマスのすべてがつまっています。クリスマスのすべてを子どもたちに伝えたい、子どもたちとたのしみたい、という気持ちが、つまっています。
それはもう、幸せな音楽を奏でるオルゴール箱みたいに、ひらくと、あふれ出してきます。
作者は、テディ・ロビンソンシリーズのジョーン・G.ロビンソン。とびきり愛らしいイラストと、親しみやすく語りかけてくる文章で、絵本の物語を読むようにたのしみながらクリスマスを理解することができます。
クリスマスがどんな日かを伝える「クリスマスおめでとう」
真っ暗な夜空にあらわれた大きな星と天使に、なんだろう?とついて行く羊たち。大きな星が教えてくれたところは馬小屋で、中ではマリアさまが男の子の赤ちゃんをだいていました。すやすや眠るかわいい赤ちゃんの名前は、イエスさま。天使の話した「うれしいこと」は、イエスさまのお誕生でした。
天使と羊たちは、このうれしい知らせをみんなに伝えにでかけます。羊はにわとりに、にわとりはひよこたちに、雲に、花に、森に・・・「イエスさまのおたんじょう おめでとう!」が広がっていき、最後には子どもたちがツリーのもとでお祝いする「クリスマスおめでとう!」とつながります。
幼稚園の壁面飾りのような、くっきりとした色合いの、素朴な貼り絵で描かれる絵は、ひたすらに朗らかでわかりやすく親しみやすく、ちいさな子たちにも、この出来事の「うれしさ」を伝えます。
ブルーナの「クリスマスってなあに」がより易しい内容になったこの絵本もあります。元の絵本が横長の構図が物語にいきていて、とってもよいのですが、こちらの可愛さも捨てがたい・・・お話はより簡潔になっているので、小さい子からたのしめます。
そのほか、降誕物語の絵本は、こちらで紹介しています
短くシンプル、だけどちゃんと物語
「ごろごろどっしーん」
あしたはクリスマス。山の上に住むりりこちゃんが、お母さんに頼まれて、山ぶどうのジュースを届けに山の下のおばあちゃんのうちへ。お母さんに見送られながら、ジュースの瓶のはいったかごを抱えて元気よくでかけていきました。
ところが、ジュースの瓶がコロン・・・雪の坂道を転がりだして・・・雪でふくらんでころころ・・・
そして、雪で遊んでいたりすさん、雪かきしていたうさぎさん、薪を運んでいたきつねさん、顔を出したくまさんを巻きこんで 、大きな大きな雪の玉になってごろんごろん。ついには山道を登ってきた”あの人”も巻きこんでごろんごろんごろん・・・
どっしーん!とついたところは、おばあちゃんのうち。ぽん!とコルクのはずれたジュースは、美味しそうな山ぶどうのシャーベットに。サンタさんも山道を登らなくてすんだし、大ハッピーエンド♪
「ぐるんぱのようちえん」の作者でもある西内ミナミさんが文章を手がけ、小さな子も楽しめ、何度でも繰り返し読みたくなるシンプルなストーリー。長く品切れなのが、ほんとうに残念な1冊です。
「クリスマスのふしぎなはこ」
クリスマス・イブの朝、小さな男の子が縁の下で見つけた、木製の箱。ふたをあけてのぞくと、薄暗いどこかの部屋のベッドでサンタさんが寝ています・・・!
箱を自分のベッドの下にかくした男の子。少しずつ時間がすすむ中で、わくわくして気になることがいっぱいです。「ねえ、おかあさん。サンタさん、もうしゅっぱつしたかなあ」「ねえ、おかあさん。サンタさん、もう そりにのって はしってるかなあ」「ねえ、おとうさん。サンタさん、もうすぐ ぼくんちに くるかなあ」
そのたびにこっそり箱をあけると、箱の中の世界のサンタさんは、北の国で準備して出発し・・・雪深い森の中をそりで走り・・・どこかの知らない町の上を飛び・・・
お父さんお母さんとのやりとりと、箱の中のサンタさんの現在が、少しずつ近づいていき、わくわくが募る♪ 小さな子にもわかりやすく短い物語なのに、しっかりとファンタジーが味わえる絵本です。
クリスマス楽しさがつまってる!
「エリーちゃんのクリスマス」
ちいさなエリーちゃんは、お友だちの動物たちとツリーのかざりつけをしました。みんな一生懸命に働いて、すてきにできたツリーでしたが、てっぺんのお星さまがありません。エリーちゃんは、お星さまをさがしに雪の中をひとりででかけていきました。
出会う人や動物たちにききながら、森の中を探していると・・・
ツリー、星、ココア、サンタさん、お星さま、etc・・・クリスマスにかかせないものたちが、次々に登場。だれのこころにもまっすぐに届く、素朴でささやかなクリスマスのおはなしです。
まっ赤な表紙も、かたちも、大きさも、見開きに描かれたたくさんのクリスマスのかざりも、エリーちゃんも、仲間たちも、小人のような小さなサンタさんも!(ぜひ見てほしい!)なにもかも、愛らしい、のひとこと。
小さな子から楽しめて、おとなも魅了する、1956年の絵本です。
「ちいさなねずみのクリスマス」
ちいさなねずみくんが、大好きなクリスマスを紹介してくれます。
ヒイラギやビーズやリボンで飾られた部屋、ツリーのガラス飾り、ツリーの下のたくさんのプレゼント、コマドリ、テーブルに並んだクリスマスのお菓子、輪飾りやおもちゃ、灯されたキャンドル、キャロルに暖炉の前の靴下、そしてもちろん、サンタクロース!
クリスマスを彩るものが、ぜーんぶ、イギリスのイラストレーターで絵本作家、アン・モーティマーの繊細で華やかで美しい絵で描かれていきます。ビーズのようなお目目ののねずみのちょっとした表情の動きもかわいいし、ユーモアや遊び心も忘れません。
特別なストーリーはありませんが、目に楽しい♪ 外国のクリスマスの空気を、小さな子が丸ごと楽しめる絵本です。
「ぐりとぐらのおきゃくさま」
森で雪合戦をしていたぐりとぐらは、雪のうえに大きな穴をみつけました。どうやら足あとらしいその穴。誰の足あとなのかたしかめるために辿っていくと、なんと、ぐりとぐらの家につきました。なかにはいると、大きな長ぐつがおいてあります。
うちの中にはいると、まっかなオーバーに・・・まっしろなえりまきに・・・まっかなぼうしに・・・大きなてぶくろに、大きなふくろ。そう。ぐりとぐらといっしょに、おそるおそる先に進みながら、大好きなだれかさんに会える予感が、つのります。
くいしんぼうで、みんなとたのしく過ごすのが大好きなぐりとぐらへのプレゼントは、大きなケーキです。(このサンタさん特製の焼きたてケーキが、可愛くておいしそうで!) そして、においにつられて集まってきた、たくさんの友だちとのお茶の時間。みんなの、幸せそうにくつろいだ様子を眺めながら、これが、本当のおくりものなのだなあと、思うのでした。
小さな子にぴったりの、ささやかでおだやかなお話
「ゆうびんやのくまさん」
クリスマス・イブの朝。くまさんは、いつものように、お仕事にでかけます。
駅にこづつみを受け取りにいき、郵便局で手紙やこづつみにはんこをおし、やぶけかかった包みをきれいになおし、 配達に。勤勉で丁寧な仕事をするくまさんは、贈り物を届ける先々で、あたたかく迎えられます。
働いて、夜ごはんを食べたら、また明日に備えてベッドへとむかう、健やかなリズムの一日。丁寧な生活を丁寧な語り口で描く、ページの隅から隅まで愛らしい絵本です。ぬいぐるみのようなくまさんが、もくもくと働く姿を応援せずにはいられません。
くまさんが配達に行く先の家々は、どこもクリスマスのしたくの真っ最中。窓辺のカード、きれいに飾られたツリー、床に落ちるやどりぎやリボン・・・だれもが期待いっぱいで待ちわびる、わくわくと幸せな空気がそこにあります。
そして、こじんまりと整ったくまさんのお部屋は、いくら眺めても眺めたりないくらい素敵です。ツリーもプレゼントも、暖炉の上の写真やクリスマスカードも。どこを見ても、無口なくまさんの語られていない物語でいっぱいです。
「まりーちゃんのくりすます」
まりーちゃんは、ひつじのぱたぽんに、クリスマスのことを、おしえます。
ちいさなイエスさまが、おうまれになった日よ。おりこうにしていると、サンタクロースが、だんろのそばにおいた木のくつのなかに、プレゼントをいっぱいいれておいてくれるのよ。
まりーちゃんは、やさしくおしえますが、それを聞いたぱたぽんは、心配になります。ぱたぽんは、ひづめが、くつのかわり。でも、ひづめは、ぬげませんもの・・・まりーちゃんも、ぱたぽんも、そろってうれしいクリスマスが、むかえられるでしょうか?
ケーキの上の砂糖菓子みたいな、まりーちゃんのクリスマスの風景。
クリスマスの朝に、自分のところにもプレゼントが届く、それほどうれしいことはないですもんね。やさしい言葉に、やさしい絵で、小さな子が1番うれしいことを描いた、最高にかわいらしい絵本です。
60年以上前に作られた絵本で、この、昔の絵本ならではの素朴さやあたたかさは、今では得難い、大切なものです。
手のひらにすっぽり、小さな絵本セット
「クリスマス・イブのおはなし」
お店にお客さんがいっぱいでケーキが売り切れてしまい、泣いてしまったあっちゃん。それを見たケーキ屋さんが、自分用の特別ケーキをくれる「あっちゃんとゆびにんぎょう」。
朝から100個のケーキを作って、1日忙しく働いていたケーキ屋さん。自分用にとっておいた100個目のケーキをあっちゃんにあげてしまい、ケーキのないクリスマスになりますが、思いがけない贈りものが届く「100こめのクリスマスケーキ」。
たくさんの子どもたちにプレゼントを届けるため、朝から大忙しのサンタさんとトナカイ。ヘトヘトで腹ペコで最後のおうちにやってきたら、おいしいケーキが置いてある「サンタさんのいちにち」。
それぞれの1日が少しずつ重なる、クリスマス・イブ。ひとつひとつの時間はささやかでも、交わるとそこにまた物語が生まれるのです。
3つの物語としても、ひとつの物語としても、楽しめます。そして、この絵本の絵は、すべて細やかで愛らしい刺繍!刺繍で綴られた14センチ角のちいさな絵本が3冊箱にはいっているなんて、素敵でしょ♪
「クリスマスの三つのおくりもの」
準備中
ゴールデンブックから2冊
「ジングルベル」
クリスマスが近づくと、小さな子も口ずさむ、ジングルベル♪ じつはそり遊びの歌なのですが、鈴の音と合わせて流れてくるとやっぱり気分はクリスマス。この時期には欠かせません。”ゆきをけり のやまこえて”で始まるこの絵本は、ジングルベルの歌詞を織り交ぜ、歌の世界をかわいいクリスマスの物語にふくらませます。
「うたごえも たからかに」そりを走らせるくまの親子。友だちの動物たちが次々に乗りこみぎゅうぎゅうのそりは、どんどん賑やかになっていく歌声ものせて走ります。と、その先で手をふっていたのは・・・サンタクロース!
お話の中でみんなが歌うところは、読み手も歌うようになっている、たのしいしかけ。
こんなににぎやかで、朗らかなクリスマス絵本、なかなかありません。出てくる動物たちも、サンタさんも、ずーーーっと楽しそうに、笑っていますもん。小さな子にとってのクリスマスって、笑顔と歌声とハッピーを詰め合わせたみたいな、こんな1日ですよね♪
1964年に刊行された、古き良きゴールデンブックスの1冊です。
「ぼくたちのプレゼントはどこ?」
きょうはクリスマス。朝いちばんに起きてきた2ひきのねずみくんたちが、サンタさんの置いていってくれたプレゼントをのぞきこんでいます。ツリーにのぼってキョロキョロ。キャンディーの瓶のまわり、絵本に描かれたサンタさんのそり、贈りものにもらったおもちゃ、ジンジャークッキー、ぬいぐるみ・・・ねずみくんたちは、あちこち探しまわります。
「ぼくたちに ぴったりの プレゼントは どこ?サンタさんは わすれてしまったの?」
すべてのページに、クリスマスの憧れアイテムが次々に登場。よく知っているけど絵本でしか見られない、そんな夢のあれこれを目にするだけでも、心が弾みます。自分にぴったりのプレゼントを探して見つかる・・・そんなシンプルな展開も小さな子にぴったり。
ゴールデンブックといえばこの人、リチャード・スキャーリー。明るく朗らかでキュート、なつかし雰囲気をまとっているけど懐古主義ではない、これも、そんな楽しい絵本です。
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いかがでしたか?
書店などでよく見かける小さな子向けのクリスマスの絵本は、しかけのあるものが多いです。もちろんそれもおもしろくて子どもたちはよろこぶし、ここで紹介しているよりももっと小さな子も楽しめて、ことり文庫でも並べていました。
けれど、ここでは、おとなに読んでもらってはじめて楽しめる絵本、一緒に時間を紡ぎ、思い出を重ねる絵本。そんな視点で選んでみました。
長く付き合える、よい1冊に出会えますように!
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