たのしいふゆごもり

芽吹き、繁栄の季節をへて、大地へ感謝を捧げるように実り、色づく大盤振る舞いの秋の日々に、突然あらわれる、冬の扉。

まだ大丈夫、と、輝く季節にたわむれていると、あっという間に冬に放り込まれてしまうことを、動物たちは、よく知っています。

ある日、こぐまが目をさますと、母さんぐまの様子が、いつもと少し違いました。

空気の中に、冬のにおいをかいだのです。

さっそくふたりは連れ立って、冬ごもりの用意をしに出かけます。

もくもくと木の実を集め、はちみつや魚や綿やきのこを採るお母さんの横で、こぐまは、手伝っているような、遊んでいるような、お友だちとののどかな時間を過ごします。

そうして家に帰り、豪華な夜ごはんを食べ、一緒にベッドにはいるぬいぐるみを作ってもらい、たのしかった1日を振り返りながらお茶をのみ・・・気がつくとウトウトと、ベッドの中。

降り始めた雪の静けさに包まれて、長い冬ごもりがはじまります。

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こぐまにとって、初めての冬ごもり。

お母さんは、どうすれば長い長い夜を楽しみに変えることができるのか、ちゃんと知っているのです。

それは、おいしい食事でお腹を満たすのと同じように、安心や満足、それからたのしい思い出で、こころをいっぱいにしてあげること。

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ページを開くと、どこもかしこも隅から隅まで、金色の秋と、お母さんのやさしさ。

甘い言葉も、大げさなスキンシップもないけれど、そこにある日々を築いてきた信頼は、子どもを安らぎでくるみます。

ああ、せめて、眠らない我が子にイラつく前に、この絵本を思い出す余裕があったらなあ・・・

【この本のこと】

「たのしいふゆごもり」
片山令子 作
片山健 絵
福音館書店

【だれにおすすめ?】

読んであげるなら、3、4歳くらいから

お母さんぐまは、愛してるとか、かわいいぼうやとか言わないし、ハグしたりもしないのです。

でも、一緒に読んでいる子どもたちの様子を見ていると、許容されているということや、希望を聞いてもらえるということが、こんなにうれしいのか、と我が身を振り返って反省するほど、楽しみます。

子どもたちにとって、一番の望みは、この絵本にあるようなことなのだと、読むたびに思います。

 

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