グリンピースのいえ


ー いちめんの おちばのなかに

  かんづめが ひとつ おちていました。
  これは ただの かんづめのようで じつは
  ただの かんづめではありません。
 

緑色のレトロなグリンピースの缶詰(もちろんキコキコ開けてある)から、きょろきょろと顔を出しているのが、そう、かえるのグリンピースです。

この缶詰は、グリンピースの家の、玄関なのです。

玄関をはいると、そこは、落ち葉の下の地面の中。くねくねしたトンネルで、部屋から部屋へ、つながっています。

グリンピースのソファは、ピアノ。座ったり寝そべったりすると、ポロンポロンといい音がします。

読書家のグリンピースは、本(の切れ端)を、毎日少しずつ読みます。

体操(針金ハンガーにビニールボール)して、宝石(きれいな色のたくさんの瓶)を毎日ピカピカにみがき、お風呂(タイヤ)で鼻歌を歌い、あたたかいふとん(てぶくろ)で眠りにつきます。

そして、雪が、缶をすっかりおおってしまっている間、つづきを夢にみるのです。

グリンピースの住まいは、土に埋まっているもの、そのままの姿を活かした、自然な設計。

朽ちていくものに、独自の価値を見出し、自在にアレンジをしたそれは、まさに、ヴィンテージな男の隠れ家。

土の中には、まだ見えぬたくさんのもの・・・可能性がたくさん眠っている、それがロマン。降りしきる雪の下で奏でられるまだ誰も聴く人のいない物語に、静かに胸踊ります。

【この本のこと】

「グリーンピースのいえ」
及川賢治
竹内繭子
教育画劇

【だれにおすすめ?】

短いので、3歳でも聞けるとは思いますが、これを心から楽しむのは、10代からおとなのような気がします。

井の中の蛙、だからこその、グリンピースの暮らしの満足度。

独自に発展させていく文化。

そして、土の中に埋まる、たくさんのまだ見ぬものが、それだけの可能性を示し、まだ聴く人のいない続きの物語を奏で、ロマンを感じずにられません。男の人にもプレゼントしてみたいなあ・・・

こんなにいろんな「もの」が埋まっている、ここはどこなんだ、とも思いますけどね!

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