「おじいちゃんとパン」「ここからおいしいよかんがするよ」

食べることは、つながることー

それは、命をつなぐ、という意味で使われることも多いと思いますが、日々の暮らしの中でより感じるのは、人と人のつながりです。

一緒に食べる人。作る人と食べる人。

何を食べるか、よりも、誰と食べるか。幼い頃の食卓、好きだったお菓子、給食、お弁当、旅先・・・食の記憶の背景には、たいてい、誰かがいます。たとえひとりで食べていても、どこかにその影があるように思います。

一緒に食事をすると、それだけで距離が縮まり、食事を作る側になると、よろこんでくれるようにとそちらの方に気を使い、誰かが作ってくれたご飯は、それだけでしあわせ。

生きていくことの中心に食があるのは、つながりがありからこそかもしれません。

おじいちゃんとパン

ちびすけと呼ばれる少年と、甘くアレンジした食パンが大好物のおじいちゃんとの日々のひとこまを描いた「おじいちゃんとパン」

先にバターをぬって、ジャムをいっぱいのせたパン
焼いてからバターをぬって、あんこ(つぶあん)をぬって、きなこをかけたパン
パンを軽く焼いてから、半分に切ったマシュマロをのせて焼いたパン
etc・・・

おじいちゃんのこだわりが随所に詰まった、とっても美味しそうなパンが、ページをめくるたびに登場します。パンには、ちびすけの解説付き。

そして、ページをめくるとともに、時が過ぎ。

ちびすけはどんどん大きくなり、字も上手になり。おじいちゃんは同じ姿で同じ椅子で同じように悠然と甘いパンを食べ。やがて社会人になったちびすけが、いつものテーブルに向かい合うと、そこにはおじいちゃんの姿はなく・・・

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少しずつ変わっていく関係、変わらない親愛。

ちびすけが楽しみだったのは、パンよりも、パンを通しておじいちゃんと向き合う時間。好きだったのは、おじいちゃんがパンを食べる姿。

そして、食べることのつながりは、次作の「ここからおいしいよかんがするよ」に続きます。

手にしたお弁当箱を、期待いっぱいの顔で見つめる少年。「ここからおいしいよかんがするよ」と、ふたを開けたら、ミートボールのお弁当。

台所のテーブルに並ぶ、ふたのついたお茶碗をじーっと見つめる少年。「ここからおいしいよかんがするよ」と、ふたをとったら、ほかほか茶碗蒸し。

仕事から帰ってきたお父さんの紙袋から出てきた、リボンのかかったきれいな缶。あとはサラダを待つばかりの食卓の、ランチョンマットの上のグラタン皿。いつもと違う座卓に家族そろったところに登場するお重。どれも、ぱかっとあける瞬間のわくわくを、みんなが知っているものばかり。

最後は、空っぽのホットケーキの箱からの、とびきりときめく予感がする展開で・・・

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めくると中身が描かれている単純なしかけなのですが、出てくるものが予感通りなのが予感以上のうれしさ。少年を囲む家族の様子もあたたかく、しあわせってこういう感じだよなーなんて。

この本だけでも、十分に楽しめますが、先の「おじいちゃんとパン」を読んでいたら、ひとしお。なにしろ、あの人があれで、あの人があれで・・・つながっていて、きっと、これからもつながっていきます。

【この本のこと】

「おじいちゃんとパン」
「ここからおいしいよかんがするよ」

たな 作 

パイインターナショナル

【どんな人におすすめ?】

「おじいちゃんとパン」は、5歳くらいから、おとなまで。「ここからおいしいよかんがするよ」の方は、3歳くらいの小さい子から楽しめます。

シンプルだけど、単純じゃないです。この絵本も、食べることも。

created by Rinker
著者:たな  出版社:パイインターナショナル
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著者:たな  出版社: パイ インターナショナル

作者のたなさん、この絵本より先に、漫画を出版していますが、これがまた、いい!

小さなお話が、どれも少しずつつながっていて、その中心にいつも食べものがあります。どのお話もあったかく、どの食べものも素朴でおいしそうで。1話ずつ話の終わりにレシピもついているのですが、シンプルでやってみたくなるものばかりです。

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著者:たな  出版社 : 実業之日本社
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著者:たな  出版社 :実業之日本社

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