お友だちとは、いつも仲よく。
いじわるはダメ。
そう、おとなはいうけれど。
子どもが、じょうずに本音と建前を使い分けていたら、それはそれで、いやなわけで・・・
すーちゃんとねこちゃんが、おさんぽしていると、ふうせんがひとつ、とんできた。
ねこちゃんがはじめにとったのに、すーちゃんは、横どりして、家に帰っちゃった。
窓の外から、「ぼくのだよ!」っていうねこちゃんを、すーちゃんはしらんぷり。見せびらかしながら、ふうせんにキスしたり、ふうせんにお洋服着せたり、ついには、ふうせんと一緒に、おふとんにはいって眠っちゃって・・・
・ ・ ・
佐野洋子さんのデビュー作は、いじわるなお話。
ふつうのおとなが、気づかないふりして暮らしていることを、さらりと、さらけます。
いじわるしちゃったすーちゃん
これでもかって、いじわるがとまらないすーちゃん
ちっとも、わるびれないすーちゃん
つらぬきとおすすーちゃん
ドキドキしながらみつめる、わたしたちに、佐野さんの声がきこえるようです。
いじわるも、かなしいも、なかなおりも、うれしいも、きもちいいも、理屈ではなくて、本能。もっとシンプルで、神秘的なものなのよ、って。
ほら、ふうせんをとばす、すーちゃんの横顔、今、このときの風だけ、かんじてるでしょ。
【この本のこと】
「すーちゃんとねこ」
さのようこ 作
こぐま社
【だれにおすすめ?】
読んであげるなら、4歳くらいから。
すーちゃんはいじわるなことをするけれど、この絵本を読んで、「いじわるはダメだよね」なんて野暮なことを言ってはいけないです。おとなが口を出した途端、子どものシンプルな世界が崩れてしまう。
子どもらしくいてほしいと思っているのに、ついつい、おとなが長いことかけて手にした良識に、つべこべ言わずに倣ってもらおうとしてしまうけれど。
やさしさも、いじわるも、きっとみんな最初から持っていて。
ケンカや仲なおり、うれしいやかなしいを、たくさん経験して、やさしい人になっていけばいいんだよなあ。
そんな気持ちで、半分自分に、読み聞かせているこの頃です。
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