大切にしていた図鑑のページがこわれてしまった少女。
なおしてくれる場所をさがして、パリの街を走り回る少女は、ルリユールという本なおしの職人の話を聞き、路地裏へやってきます。
扉の向こうは、たくさんの紙や皮やその他、大小の道具や材料でごちゃごちゃ。
目を輝かせる少女の声と、本から聞こえる声。
どちらにも静かに耳をすませながら、本なおしのルリユールおじさんは、しずかに、丁寧に、託された図鑑にあたらしい命を吹き込んでいきます。
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ルリユールという言葉の持つ「もう一度つなげる」という言葉の通り
少女の想いとルリユールを
木の図鑑とルリユールおじさんの思い出を
この出来事すべてと少女の未来を
つなげて、綴り、丁寧に仕上げられたストーリーは、とても丈夫でしっかりとしていて、何度くりかえしページをめくっても、こわれることはありません。
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おじいさんの子ども時代と、少女の未来は、交わっている。
少女の見上げる木を、別の日に見上げている人が、きっといる。
たくさんの想いが、リレーのようにつながり、支え合い、人生は紡がれていく・・・そんなシンプルで力強い感覚が、しっかりと心に根をはります。
【この本のこと】
「ルリユールおじさん」
いせひでこ 作
講談社
【だれにおすすめ?】
読んであげるというより、自分で読む絵本です。
小学校中学年くらいから。
ことり文庫では、旅立ちや卒業の贈り物にも、よくおすすめしています。
本について
夢中になることについて
仕事について
続けることについて
バトンを渡すことについて
受け取ることについて
未来について
そして、時について。
そのすべてが、短い文章で描かれていることに、読むたびに、感動します。
ルリユールが手がけた本のように、一生めくることに耐えうる、素晴らしい絵本だと思います。
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