暑い暑い。
こう暑くては、冷たいきれいな川にどぶんとしたい。のんびりするより、スピードをあげたい。水しぶきをあげたい。せっかくの夏休みだし、ワクワクするような冒険にしたい。できれば、仲間もいてほしい。なんなら人生観を変えるような経験をしてみたい。
ぜいたく?いえいえ。
その願いを叶える絵本が、あるんです。
むかし むかし あるところに
本文より
かわが いっぽん ながれていました。
ひるも よるも ながれていました。
でも かわは
じぶんが かわだということを
しりませんでした・・・
あることが おきるまでは。
ある日くまがやってきて、古い木によじ登り、どっぼーん!と川に落っこち、そこから「この」物語は色めきます。
川に落ちたくまは、このとき、これからどんなことが起きるのか、まだ知りません。それが起きるまで、わかっていません。
「それ」は、次々に起こります。友だちを探していたカエルが頭に乗っかって、臆病なカメを道連れにして、元気なビーバーが船長役を買って出て、陽気なアライグマが木から飛び降りてきて、のんびりやのアヒルにぶつかって、そして・・・
まだ、何も知らない。その時になるまで、それが起こるまで、わからない。
経験して、はじめてわかる、経験して、はじめて世界が色づきはじめる。
澄んで気持ちのいい川のブルー以外はセピア色だった景色が、ご一行が通り過ぎたとき、目に入ったとき、そっと色をもっていったように。見返しにある森の地図が、最初と最後ではまるで違う場所のように思えるように。
一寸先は闇かもしれない、そうでないかもしれない。
心配ばかり並べないで、前もって調べてばかりいないで、何かで読んで知った気になっていないで、とりあえずやってみよう。自分の目で見てみよう。あなたが出発するまで、何も起きないのだから、ね。
川の流れに身をまかせ・・・なんて、のんびりしたものでは、ありません。終始ハイテンションのジェットコースターに身をまかせ・・・な絵本です。たどり着いた場所が最高!ここからまた、「あの」「その」物語があちこちに散らばっていく予感が満載です。
【この絵本のこと】
「かわにくまがおっこちた」
リチャード・T・モリス 著
レウィン・ファム 絵
小坂涼 訳
岩崎書店
【どんな人におすすめ?】
読んであげるなら、3歳くらいから。絵もストーリーも元気がよくて、ノリノリで、小さい子も楽しめますが、細部をみたり深読みしたり、年齢問わずにおすすめです。
シンプルに楽しむのもよし。
愛嬌のある絵と勢いのある物語に夢中になって、そして、何度も繰り返し読むうちに、そうか、そうだね、と、いろんなことが腑に落ちて、どんどんスッキリ感が増していくと思います。