よる。こどもたちが もうねているころ。
本文 冒頭より
月が山のうえから顔をだし、お星さまがまたたく夜。
遠くの山のてっぺんの背の高い松の木に、くまが登って、やまぶどうの実を食べていました。
くまは、あむあむ食べながら、上へ上へ。松の木はたまらず、おりてくれるように頼みますが、食べるのに夢中のくまには聞こえません。
松の木は、くまの重みで、右へ左へ。そして、とうとう、大きくしなって・・・バネのように跳ね上げられたくまは、びょーんと空へ飛んでいきます。
さあ、そこからは、もう誰にもやめられない、とまらない。
飛んでいったくまは、空で休んでいた大きな雨雲を突き抜けて穴をあけ・・・雨雲はびっくりして貯えていた雨をぜんぶ落としてしまい・・・それは大きな湖になり・・・空に飛んでいったくまはお星さまにがば!っと飛びつき・・・お星さまはあまりの重さに流れ落ち・・・ほかの星もあわてて追いかけて・・・
朝になって目が覚めたおひさまは、山のようすがいつもとずいぶん違っているのを見て、「夜のあいだになにかあったな・・・」とすぐに気がつき、みんなに号令をかけ。
こうして、みんなが起きるころには、素知らぬ顔でいつもの朝が戻っているのでした。
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シンプルだけど、異国の雰囲気が目をひく表紙です。
深い自然を思わせる色彩。動物然としたくま。くま、というより熊。
ひらがなのフォントも、作者の名前すら、どこかレトロな感じがして、古き良きロシアの絵本のような趣があります。
ページをめくっても、自然は自然のまま。くまは熊のまま。
物語だけ、静かな夜から、少しずつ空気がザワザワと動き出し、あれよあれよとユーモラスでファンタジーな展開へ・・・次から次へと騒動を引き起こしている張本人はというと、驚きっぱなし、というような何ともいえない罪のない表情をしており・・・最後まで、熊のままなのです。
そのバランスがおもしろい。
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版元のブロンズ新社さんのHPに、この作品の制作秘話があります。
作者のアヤ井さんが、北海道出身とのことで、納得。これが、初めて文章も手がけて出版された絵本です。
数年前に課題図書になったり、日本絵本大賞を受賞したこの絵本の絵も、アヤ井さん。
今年出版のこの絵本の絵も、アヤ井さん。繰り返しの出てくるストーリーもたのしいけれど、絵もとってもかわいかった♪
ホームページやツイッターをのぞくと、並ぶ作品に、なるほど!これは・・・なにも知らなかったら、ロシアの絵にしか見えません。
自然と、絵や絵を描くことへの探究心。広がる世界が楽しみな作家さんです。
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【この本のこと】
読んであげるなら、4歳くらいから。
絵と物語、ユーモアとまじめさのバランスが楽しい。短く、テンポよく、メリハリのある展開で、読み聞かせにももってこいです。
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