【読書感想文】読んで紹介!課題図書 中学年の部【2022】

2022年度の課題図書を実際に読んでみました。

どれを読もうかな・・・夏の読書の本選びに迷ったら、お役立てください。

感想文を書くことには賛否両論ありますが、好きなものについて考えることや、話すことや、書くことや、紹介することは、本来たのしいことのはず。

読むのは、みんな。感想は、それぞれ。まずはおもしろい本や好きな本と出会って、自分のそのときの気持ちを、素直に綴ってみてくださいね。

娘の作文に付き合いながら考えた、感想文のコツをこちらにまとめてみました

「みんなのためいき図鑑」

4年生の”たのちん”は、困っていた。授業で班ごとに図鑑を作ることになったのに、たのちんの班だけテーマが決まらない。メンバーは超マイペースなコーシロー、口うるさいのにやる気がいまいちな七保と小雪、そして去年の夏から保健室登校を続ける加世堂さん・・・テーマ決めを押し付けられた、お人好しのたのちんが、苦し紛れに思い付いたのは「ためいき図鑑」。おもしろそうなテーマに、順調に走り出したと思いきや・・・

誰が絵を描くか、でまず一波乱。けれど、それは思ったほど単純な問題ではなく・・・それぞれの立場や思いに向き合いながら、振り回されながら、悩みながら、図鑑の完成に向けて図らずも奮闘するたのちん。無事に図鑑は完成するのでしょうか?どんな図鑑になるのかな?

【どんなところがおすすめ?】

「ためいき図鑑」を作る、という発想が、まずおもしろそう!

そこから、いろいろな人間関係の中での図鑑作りが描かれていく物語なのかと思いきや、紙に書いた落書きから飛び出した「ためいき小僧」なるものが登場し、エンタメの要素が加わります。

友だちとの関係、家族の期待、自分自身とも向き合いつつあり、小学生も中学年ともなると、らくじゃありません。それぞれの問題をきちんと受け止めて、正面からぶつかったり横から観察したりしながら、自分でなんとかしようとする登場人物たちは、たくましいです。

そして、ためいきってマイナスなだけではない、前向きでもあるって、確かにそうだな・・・いろんな見方があることや、自分ならどんな図鑑を作るかな?と自然に考えられそうです。

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著者:村上 しいこ, 中田いくみ 出版社 :童心社

「チョコレートタッチ」

ジョンは、お菓子が大好きな男の子。お菓子が好きすぎて、いつも頭はお菓子のことでいっぱい・・・お小遣いは全部お菓子に使ってしまうし、お菓子を食べすぎていつもご飯が食べられません。お父さんとお母さんは心配し、あれこれと手を尽くしますが、まったく効き目はありません。

そんなある日、ジョンは、道で不思議なコインを拾います。そしてその先で見つけた素敵なお菓子屋さんで、そのコインを使ってチョコレートを一箱買って、こっそりと食べてしまいました。すると翌日、歯磨き粉がチョコレートの味がします。歯磨き粉だけでなく、牛乳も、目玉焼きも、手袋ですら、口に入れるとチョコレートに変わるのです。最初はよろこんでいたジョンですが、事態はどんどん悪くなり・・・

【どんなところがおすすめ?】

食べるものが全部お菓子だったら・・・そう考えるとワクワクする子が多いのではないでしょうか。でも本当に?読み始めるとすぐに、それがそれほどいいことじゃないと気づき、ジョンと一緒に胸やけしながら、この先どうなってしまうのか心配になります。冷たい水や、パリッとしたレタスが恋しくなります。

日本で翻訳されたのは去年ですが、50年も前に書かれたお話なのだそうで、ものネタはギリシア神話で触ったものすべてを金に変えてほしいと願った王の話「ミダス・ダッチ」だと、訳者のあとがきにあります。

共感しやすく、教訓わかりやすく。自分の好きないろんなものに置き換えて考えやすいです。

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著者:パトリック・スキーン・キャトリング, 佐藤淑子  出版社 :文研出版

「111本の木」

インドのある村では、女の子が生まれると111本の木を植えてお祝いをします。それは、昔からある習慣ではありません。男の子の誕生だけが尊ばれていたその村で、娘を亡くした一人の父親が思いつき実現しました。それからたった20年足らずで、村には今は25万本の木が茂っているそうです。これは、この活動が生まれた背景を織り交ぜながら、貧しい村が豊かに変化していく様を描いたノンフィクション絵本です。

美しい色彩の絵と静かで柔らかな言葉で紡がれる、新しい伝統の物語。巻末には、写真付きで、村長になり思いを実現したスンダルさんのこと、このピプラントリ村のこと、そこにあった問題、計画の実行から現在の姿まで、いくつかの項目が設けられ疑問に細やかに応えます。

【どんなところがおすすめ?】

疑問に思うこと、考えること、声を上げることの大切さ。ひとりひとりの持つ力の大きさが、わかります。

この活動のもうひとつの背景、村にあった大きな大理石工場による自然破壊や、貧しさ、男尊女卑の社会による教育格差などのたくさんの問題。これが、ひとりの人の「女の子の誕生を祝って木を植える」という思いつきでつながり、解決に導かれていくことに心打たれます。

貧困、飢餓、健康と福祉、教育、安全な水、ジェンダーの平等、働きがいと経済成長、働く環境、陸の豊さ・・・・スンダルさんの活動は、図らずもSDG`sのいくつもの項目への取り組みにも当てはまります。今ある問題の多くは、こういった身近な自然や人を大切にすることから解決できるのだと気づきます。

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著者:リナ・シン, マリアンヌ・フェラー  出版社 :光村教育図書

「この世界からサイがいなくなってしまう アフリカでサイを守る人たち」

アフリカ大陸の大草原、サバンナ。その広大な保護区は、キリン、ゾウ、ライオンなどの野生動物たちが悠々と暮らす楽園のような場所・・・しかし、その裏では「密猟」との戦いがあることも知られています。さまざまな理由から、さまざまな動物が密猟の危険にさらされていますが、この本では、中でも被害が深刻な種のひとつであるサイの密猟とそれに立ち向かう人々に迫ります。

巻頭の数ページにカラー写真でダイジェストがあり、「とてもユニークなサイ」「いま、アフリカで起きていること」「科学の力でサイを救え!」「女性レンジャーが出動」と目次が並び、間にコラムがはさまれます。

ひとつの動物をめぐり、こんなにも様々な人が懸命に関わっているということがわかります。同じ地球上で、今、起きていること。私たちが知って、興味を持つ、サイを救う小さな一歩になります。

【どんなところがおすすめ?】

どの目次も初めて知ることが多く、痛々しいサイの姿や想像以上に厳しい数字に胸が痛くなったり、それに立ち向かう人々の活動に胸が熱くなったり。この100年で50万頭から2万7000頭まで、約95パーセントものサイが減ってしまったという数字にはインパクトがあります。

その大きな原因の密猟の背景には、貧困や戦争、そして無知(科学的にはサイのツノには薬としての効果はないというのですから・・・)などが絡み合い、そこに目を向けることもできます。

他にも、サイという動物、科学、野生動物の保護、レンジャーの活動、など、読む人によって興味の角度は変わり、気になったことをインターネットで調べてみるとさらに広がると思います。

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著者:味田村太郎  レーベル : 環境ノンフィクション  出版社 :学研プラス

アフリカの保護区が舞台の児童書のシリーズがあります。対象年齢も同じくらいなので「この世界からサイがいなくなってしまう」を読んで興味をもったら、合わせて読んでみてね。

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著者:アレグザンダー・マッコール・スミス, もりうちすみこ  レーベル : 文研ブックランド  出版社 : 文研出版   ページ数 : 126p

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2022年の課題図書、低学年の部は、こちらにあります。

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