漂流物

海辺を歩いていると、いろいろな物を見つけます。

今、世界中で問題になっている、プラスチックゴミは本当に多く、ぱっと見て大きなものは見当たらなくても、小さなマイクロプラスチックが海藻の間にたくさん散りばめられていたりします。

海藻、貝殻、流木、木の実、羽根、何かの骨、生き物の死骸・・・何年か前には、シロナガスクジラの赤ちゃんが、流れ着いたこともありました。

外国の文字の書かれたビン、お茶碗のかけら、誰かのおもちゃ、錆びた部品、何かの種。

どこから来たのか、いつのものなのか、どんな旅をしてここにたどり着いたのか。海辺の漂流物はどれも、時を宿しています。

漂流物

家族で海に来た少年。ヤドカリやカニを夢中で追っていると、大きな波が来て、古いカメラが打ち上げられました。フジツボがつき、長く旅をしてきたと思われるそのカメラには、きちんとフィルムが入っていました。

街へ帰り、そのフィルムをカメラ屋さんに現像に出した少年が、目にしたもの。

現像された写真に、写されていたのは・・・

群れの中に混ざる、機械仕掛けの魚。
ソファでくつろぐタコの家族。
ハリセンボンの気球。
貝の村を背負って泳ぐウミガメ。
海底に不時着した小さな地球外生物。
体操をするヒトデ。

そして。

・     ・     ・

長い時間、海を漂ったカメラが捉えた、人間が見ることのない、海の生き物たちのプライベート。

ここまでの展開と、リアリティのあるウィーズナーの絵で描かれた、ユーモラスなその世界に触れるだけでも、十分にたのしめそうですが、この絵本には、その先に、もうひとつの仕掛けがあります。

それは、最後の写真にあった、少年の前にこのカメラを拾った少女の姿。

写真の中でひかえめに微笑む、アジア系の少女の手には一枚の写真があり、その写真の中の民族衣装を着た少年の手にも写真があり、その写真の中の金髪の子の手にもまた写真があり、虫眼鏡で、顕微鏡で、奥の奥までのぞくと・・・

そして当然、このカメラを拾った少年も、現像したその写真とともに写真を撮り、元の海へ戻すのです。

その先は、わからない。そのカメラが今、どこにあり、何を見ているのか。わかるのは、広い海のどこかにあり、いつか、もしかしたら、あなたのところに流れ着いてくるかもしれない、ということ。

世界は、不思議なことがいっぱいあり、私たちが見られるのは、その、ほんの端っこだけです。

 

 

【この本のこと】

「漂流物」
デイヴィッド・ウィーズナー 作
BL出版

【だれにおすすめ?】

タイトル以外に、一切文字のない絵本です。

この不思議な出来事を確かめ、吟味するために、何度も、何度も、ページをめくることになると思います。

説明するのも野暮なので、この不思議を、その向こうに広がるロマンを、自分で感じることのできる、6、7歳くらいからがよいのではないでしょうか。

 

実際のビーチコーミングのよき手引書なら、こちら。専門的な視点や知識もしっかりありながら、やっぱり、ロマンを感じます。

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