16世紀の宗教改革の際、子どもたちにクリスマスプレゼントを持ってくる役目が、聖ニコラウスから幼子キリストに変わり、そして、まだ赤ちゃんである幼子キリストのお手伝いに、お付きの天使が登場するようになったそうです。(「名作に描かれたクリスマス」参照)
古い外国のクリスマスカードなどで、小さな天使たちがツリーを飾ったりプレゼントを配ったりする様子が描かれているものがありますが、彼らは、そういうお役目をしているのですね。
もうすぐクリスマス。
10人の小さな天使が、手助けの必要な人や動物たちのもとへ舞い降り、そっと手をさしのべます。
おなかをすかせた動物たちに、食べるものを。貧しいおばあさんに、小さなツリーを。
迷子の子には、手をひいて。女の子のサンタクロースへの手紙も届け。甘いものが大好きな子には、虫歯にならないように注意もします。
みんなが、すこやかに、クリスマスを迎えられるように、天使たちは、見守って、いるのです。
そして、クリスマスイブ。
10番目の天使が、小さなイエスさまのためにツリーに灯をともし、みんなで透きとおった声で、きよしこのよるを、歌います。
きよし このよる
ほしは ひかり
すくいの みこは
まぶねの なかに
ねむりたもう いとやすく
この絵本には、まるで、ほんとうに天使たちが舞いおり、手を差しのべ、歌いかけてくれているような、そんな気持ちになる、素敵なしかけがあります。
ページをめくると、歌う天使の愛らしい顔が、ひとりひとり、ふえていくのです。
ちいさな天使たちの思いやりは、あたたかで、ささやか。
おだやかな空気は伝わり、共感し、やさしさに満たされ。だれかに、よろこびを与えられると、自分もまた、だれかに与えたくなるもの・・・
愛らしさに魅せられて読むうちに、きっと、いつの間にか、クリスマスの思いやりの種が、まかれていると、思います。
【この本のこと】
「クリスマスのてんし」
エルゼ・ウ゛ェンツ=ウ゛ィエトール 作・絵
さいとうひさこ 訳 徳間書店
参照 「名作に描かれたクリスマス」
若林ひとみ 著 岩波書店
【だれにおすすめ?】
読んであげるなら、3歳くらいから。
ページの上部が天使の顔に切り抜かれ、めくるたびに並んでいくしかけが、見た目に愛らしいだけでなく、あたたかな気持ちになります。
困っている人に手を差し伸べる、誰かのために自分のできることをして喜ばせる、そんな、クリスマスの精神が、伝わります。
本当に、びっくりするくらいかわいらしいので、年齢問わず、贈り物にもおすすめです。
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