【クリスマスの絵本】もっと知りたい! サンタクロースの絵本8 冊+α

だあれも会ったことがないのに、世界中のみんなが知っている、赤い服を着たおひげのおじいさん。

サンタクロースの祖先は遡ること4世紀、小アジアの聖人・聖ニコラスと言われています。お嫁にいく貧しい姉妹に夜にこっそりと贈り物をしたという彼の伝説から、12月6日の聖ニコラスの日に贈り物をする習慣ができました。

その後、ヨーロッパの宗教改革などを経て、少しずつ姿を変えていくのですが、そのアイディアの広がりは、サンタクロースが生まれる前から、いかにその存在が人々に愛されていたかがわかり、とてもおもしろく興味深いです。そして、やがてアメリカに伝わり、現在のサンタクロースの姿ができあがります。

と、そんな細かな話はさておき。

みんなの大好きなサンタクロースって、どんな人なのかな?その暮らしのわかる絵本と、サンタクロースについて大切なことの書いてある本を紹介します。

1 コルバトントリの暮らし その1「サンタクロースと小人たち」

サンタクロースが住んでいるのは、フィンランドの北のはずれの、コルバトントリという、山のふもとの村です。そこは、人里とおくはなれているので、むかし、迷子になったおじいさんが来ただけで、だれもみたことがないのだそうです。

そのコルバトントリでの、サンタクロースと何百人もの小人たちの、とびきりゆかいな暮らしのようすを紹介している絵本です。

朝ごはんから眠るまでの風景や、大工さん、画家、印刷、縫いもの、てがみ係などなど仕事場のようす。子どもたちの学校の授業(時間割付き。工作の授業が多いみたい!)や休暇のすごしかた、おおいそがしのクリスマス前。そして、大仕事を終えて迎えるクリスマスパーティーまで。

ユーモアたっぷりの解説もさることながら、クギの1本までこまかく描かれた絵は遊びごころいっぱいで、あっちにもこっちにも物語がひそんでいます。めくるたびにいろんな発見があり、いくら見ても、見あきません。

サンタクロースがいないって・・?

この絵本をよんでから、言ってね。(4歳くらいから)

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著者: モーリ・クナス, 稲垣美晴  出版社: 偕成社

2 コルバトントリの暮らし その2「ラップランドのサンタクロース図鑑」

こちらも、コルヴァトゥントゥリから。この「コルヴァトゥントゥリ」というのは、スウェーデン・フィンランド・ノルウェー・ロシアの4カ国にまたがるラップランドにある山です。サンタクロースが小人たちと暮らす村だと言われていて、サンタクロースを語る上ではかかせない場所のひとつです。

そのコルヴァトゥントゥリには、世界中の人たちから、この場所での生活についての質問の手紙が山のように届くそうで・・・過日、サンタクロースとトントゥ(小人)の親方たちで開かれる大切な会議で、その質問にいっぺんに答えるべく、この本が出版される運びになったとのこと。

クリスマスが過ぎたある朝の描写からはじまり、サンタクロースやトントゥたちの日常や休日や特別な日のこと、村の建物や、村での出来事、親方たちの紹介、作品、仕事、家のようすや子どもたち、村のまわりの自然、そしてクリスマスに向けての準備・・・

さすが、正式な書物だけあって(?)、重厚な語り口で詳細に書かれていて、読みでがあります。子どもが自分で読むのはむずかしいかもしれませんが、1ページにひとつの題目になっているので、1日に1、2ページずつ、クリスマスまで読んであげると、きっとワクワクする時間になると思います。(読んであげて6歳くらいから)

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著者: ペッカ・ヴオリ, 迫村裕子  出版社: 文渓堂

3 北極のサンタクロースからの手紙「ファーザー・クリスマス」

ファンタジーの名手・ホビットの冒険や指輪物語で有名なJ.J.R.トールキンが、4人の子どもたちに向けて書いたサンタ書簡。

1920年、3歳の末息子の質問に答えるかたちで、北極での暮らしを短い文と絵で伝えたサンタクロース からの手紙は、その後1943年まで20年以上にわたり、子どもたちのもとへ届き続けました。

はじめ、クリスマス前の忙しさや愛を伝えるだけだった手紙は、しだいに、相棒の北極グマとのコントのような暮らしぶりを描き、寒さや金欠を嘆き、クマの甥っ子たちが住み着き、月の男やドラゴンやエルフが登場し、ゴブリンと攻防を繰り広げ・・・徐々に作家魂に火がつき、時に、数ページにも及ぶ大作になっていきます。

凍える寒さの北極から、震える手で書かれた実際の筆跡、趣向を凝らした手作りの切手、ときどきはさまれる北極グマからのコメント(もちろん筆跡が違う)、楽しいイラスト、すべてトールキンの手によるもの。

長く続く手紙の中には、サンタクロースの世界にも戦争や大恐慌が影を落とすこともあり、全てをしめくくる最後の手紙には胸がいっぱいになってしまいます。愛とユーモアでいっぱいのクリスマス・ファンタジー。(読んであげて7歳くらいから)

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ちなみに、サンタクロースが北極に住んでいる、という設定は、1880年代にアメリカのイラストレーターのトーマス・ナストが生み出したと言われています。イギリスのトールキンもそれを目にしていたのかな、どうなのかな。

ファーザー・クリスマス、というのは、宗教革命でサンタクロースが禁止になったのちのイギリスで生まれた、サンタ的な役割の存在で、伝統的にはフード付きのロングコート(に、ひいらぎの冠)の服装です。この本の中でも最初は表紙にあるような服装だったのに、時の流れとともに、アメリカ風のショートコート&帽子に変わっていくのも興味深いです。

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著者:J.R.R.トールキン, ベーリ・トルキーン  出版社: 評論社

4 サンタさんの1年「あのね、サンタの国ではね・・・」

北の果てのうつくしい森に、グランサンタと大勢のサンタたちが、なかよく暮らしています。そこでの1年間を描いた絵本です。

1月、グランサンタの家に集まり、おいしいお料理を食べながら新年のご挨拶。2月、どっさり届いた子どもたちからのお礼のお手紙を読むのがサンタたちのお楽しみ。3月、おもちゃの実の畑を耕したり、山にプレゼントの材料になる流れ星を拾いにいったり。4月、トナカイ学校の入学式。5月、サンタたちの体力測定。6月、ソリのお手入れ。7月、気球に乗ってよい子探しへ。8月、夏休み。9月、おもちゃ畑の収穫。10月・・・・

のんびりゆったり、けれど着々とすすむ、クリスマスの準備のようす。落ち着いた仕事ぶりを見ていると、なんだかとても安心します。

サンタさんたち、みんな穏やかで、ほんわかとした絵と相まってまさに夢の世界。ほんとうに、こんなだったらいいな・・・と思わずにいられません。ひと月ずつ見開きで描かれるので、今、こんな風に過ごしているんだね、って、クリスマス以外の月に読んでも楽しいです。(3歳くらいから)

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著者: 黒井健, 嘉納純子  出版社: 偕成社

一方こちらのアメリカのサンタクロースは、12月にめいっぱい働いたら、残りの11ヶ月は、なんと休暇! トナカイと助手のエルフと一緒に世界中をまわり、やりたいことをやり尽くします。

遊ぶだけでなく、スポーツクラブでダイエットをしたり、12月を前に寝溜めしたり、クリスマスに備えることも忘れません。日本にも立ち寄って、お相撲をひと勝負したり、お寿司食べたり、忍者の格好でスパイしたり・・・もしかしてサンタさん日本贔屓なのかも?

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著者: マイク・リース, マイケル・G・モントゴメリー  出版社:岩崎書店

5 サンタさんの素顔「さむがりやのサンタ」

寒いのきらい動くのきらい、しょっちゅうブツブツ言っている、妙に人間くさいサンタさん。

12月24日、小言とともに目覚め、気候に悪態をつき、煙突に文句を言い、用意されているのがジュースだと「ふん」ワインだとご満悦。けれど、文句を言いながらも仕事に誇りをもっているのは、しっかり伝わるのです。仕事の手は止めず、手を抜かず、しっかりとこなす姿は信頼がおけます。

大仕事が終わった至福の時間をのぞくことができるのも、この絵本の醍醐味。家で待っているペットに心がゆるみ、あったかいお茶を飲みながらご飯の支度。ゆっくりお風呂にはいってさっぱりした格好に着替え、ビールを飲みながらバカンスに想いを馳せ、ゆっくりとディナー・・・ そう、私たちと変わりのない、サンタさんの素顔にうれしくなります。

漫画風のコマ割り絵本。読んであげても自分で読んでも楽しいです。サンタさんが心待ちにしていた夏のバカンス編もありますよ。(5歳くらいから)

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著者: レイモンド・ブリッグズ, すがはらひろくに  世界傑作絵本シリーズ  出版社: 福音館書店
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著者:ブリッグズ,R.(レイモンド), さくま ゆみこ   出版社: あすなろ書房

6 サンタクロースの存在

「サンタクロースっているんでしょうか?」

「サンタクロースって、ほんとうに、いるんでしょうか?」

8歳の少女のそんな手紙に、きちんと答えてくれた人がいました。今から100年以上前の、アメリカのある新聞の社説です。その社説を訳し、絵本にしたこの本は、今では日本でもクリスマスの定番になっています。

この世界で一番確かなことは、目に見えないものだと。

サンタクロースの存在は、この世に愛や思いやりがあるのと同じように確かだと。

その目に見えない世界をのぞくことができるのは、信頼と想像と詩と愛とロマンスの力だと。

サンタクロースが本当は誰かなんてたいした問題ではないと、大きくなったからって、サンタクロースや妖精がいなくなるわけではないと。そう伝えるこの答えはとてもとても美しく、何度読んでも胸を打ちます。

すぐには理解できなくても、少し大きくなった子どもたちに伝えたい大切なことが、書かれています。大切に心にしまっておいてほしいです。そして、お父さんお母さんにも、ぜひ読んでほしい1冊です。(7歳くらいから)

こちらでも紹介しています→https://kotori-ehon.com/kotoribunko/santa-iruno/

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著者:フランシス・P.チャーチ, 中村妙子  出版社:偕成社

「サンタクロースの部屋」

50年以上にわたって子どもの本に携わり、東京子ども図書館の理事長も長く務めた松岡亨子さんの著したこの本には、子どもと本に関わる上で大切なことがたくさん書かれていますが、中でもわたしが大事にしているのが「まえがき」にある一文です。

アメリカの児童文学評論誌に掲載されていた言葉を引用しながら、子どもがサンタクロースを信じることの意味を語っています。

それは、未知のもの、目に見えないものに心を躍らせ、信じる力を培うこと。つまり、想像力、と言い換えてもいいと思いますが、その、人生を豊かにするために絶対に必要な力が、サンタクロース(だけでなく、絵本に出てくる魔女や妖精、妖怪など)によって養われているのです。

サンタクロースを長く信じ続けることが、大切なのではなく。

サンタクロースを信じることで生まれた、心の場所。その場所に、これから何をいれるのか。それが大切なのだと思います。

こちらでも紹介しています(引用も少しあります)→https://kotori-ehon.com/kotoribunko/santa-heya/

7 サンタクロースのことをもっと知りたい人に

クリスマスの絵本が大好きで、おとなになってからも、たくさん読んできました。

普通の物語の絵本でも、絵の中に、文章の隅に、その時代その国その家庭のクリスマスを見つけることもでき、知れば知るほど、その背景や歴史にどんどん興味がわいてきます。

サンタクロースについても、描かれ方は様々で、誰もが知っていても一様ではないことがおもしろく、いろいろ調べています。人前で話すときや、こうして文章にまとめるときには、何冊かの本を参考にしていますが、歴史に沿って細かく書かれている「サンタクロースって、だあれ?」(教文館)を参考にすることが多いです。

まだまだ勉強途中なので、もし、記載に間違えがあれば、ぜひ教えてくださいませ。

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クリスマスの絵本、他にもたくさん紹介しています。カテゴリーの「クリスマスの本」か、下のリンクからもご覧いただけます。

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