もうすぐ卒業をひかえた子どもたちの教室で読みたい絵本。
直接的な言葉はなく、メッセージがこもりすぎず、でも、そっと子どもたちの力になるような、楽しく読み終われるような、そんな絵本を選びました。
↑ こちらで、卒業する子どもたちに贈りたい絵本も紹介しています。
「みんながおしえてくれました」
歩きかたは、ねこがおしえてくれました。飛びこえかたは、いぬがおしえてくれました。気持ちのいいお散歩のやりかたは、にわとりにおしえてもらいました。
お腹の冷えない昼寝のしかた、見つからないかくれかた、花のかおりや味、土のうえのできごとや土のなかのひみつ、夜のこと、歌のこと。みんながおしえてくれた、ささやかだけど人生をたのしくするいろんなことが連ねられるのですが、この先がいいんです。
それに そもそも わたしは うまれつき かんがえるひとだし いろいろ おぼえるひとでも あるし・・・
ほかに いろいろ こまかいことは このひとたちが おしえてくださいますし
なにしろ ともだちがたくさん おりますから どうみても りっぱなひとに なるわけです。
本文より
卒園、入学のタイミングで読むことの多い、小さい子向けの絵本です。でも、このユーモアと無邪気な自己肯定、将来感。結局、はなむけにしたいのは、こういうことだったりするのです。
「ぼくとがっこう」
うちにいるとぼくはこども ぼくはぼくでいられる
がっこうにいくとぼくはせいと ぼくはおおぜいのひとりになる
本文より
タイトルページではまだ小さくあどけない「ぼく」。守られた場所から外へ出たばかり、どこか心細そうだったぼくは、けれど、ページをめくるごとに、学校を感じて、学校を経験して、学校に向かいあって、学校の一部になって、そして卒業の日を迎えます。
たのしいこともある、今までと同じこともある、いろんな場所もある、嫌いな友だちだっている、仲よくなることもある、行きたくない日もある。学校という、小さな世界で大きな宇宙。
低学年の子に読めば未来を想うし、6年生に読めば、これまでの日々をふりかえる。6年間、いろいろあったね。「ぼく」と「がっこう」というタイトルをそのまま、その関係をシンプルに明確に描き出した谷川俊太郎さんの文章の向こうで、はたこうしろうさんの物語が広がります。泣かずに読めるかなー?
「とべバッタ」
しげみの中で、ビクビクしながら暮らしていたバッタは、おびえながら暮らすことがつくづくイヤになり、ある日、決意します。そしてバッタは、敵に襲われるかもしれないことを承知の上で、大きな石の上で悠々とひなたぼっこをはじめます。案の定、ヘビやカマキリに襲われそうになったバッタは・・・
バッタは、死にものぐるいでジャンプします。ヘビをへこまし、カマキリをばらばらにし、クモの巣をめちゃくちゃにし、鳥にぶち当たり。そして、力尽き、もうだめだと思った時、背中の羽に気がつきます。今まで隠れて暮らしていた時には使ったことのなかった、その4枚の羽。
飛んでみること。
怖いことやピンチが待ち受けているかもしれない。そのピンチへの立ち向かいかたがわからないかもしれない。途中で力尽きてしまうかもしれない。無様な飛び方を笑われるかもしれない。
そんな不安は、まとめて吹っ飛ばしてくれる、力強い絵本です。自分の力で飛ぶことのよろこび、
とりあえず飛べば可能性が広がるということ、そんなことが伝わるといいなと思います。
「オリバーくん」
お芝居が好きなふくろうのオリバーくんは、一日中、いろんな鳥たちの真似をしてすごしました。
それを見ていたお母さんは、この子はお芝居の才能があるわ、と思い、お父さんは、でも、弁護士かお医者さんになるのもいいぞ、と思います。そこで、ふたりは、お医者さんごっこや、弁護士ごっこのおもちゃを買ってあげ、お芝居やタップダンスも習わせました。
「この子の才能をのばしてやりましょうよ」そう。ふたりは優しくて、とってもオリバーくん想いなのです。
オリバーくんは、お医者さんごっこも、お芝居の勉強も、ちゃんと、やってのけました。それも、楽しく。優しいお父さんとお母さんは、大喜びで、将来をたのしみにしていました。
けれど、オリバーくんが大きくなったとき、なったのは・・・
ひょうひょうと我が道を行くオリバーくんに、スカッ! つい期待しちゃう親の性をうまくかわして、こんなふうに自分の思うように、楽しく成長してね♪
「あたまにつまった石ころが」
石を集めることが大好きな少年は、そのまま、あたまにつめた石ころを手放すことなく、だからお金儲けや身の丈以上の成功への欲がはいる隙間はなく、どんな時代でも、おだやかでマイペースな表情のまま過ごしました。そしてその先にあったのは・・・
石ころ集めが大好きだったお父さんの話を、おとなになり、子どもの本の作家になった作者が語ったノンフィクションです。
石ころ、昆虫、電車、工作、絵画、星、映画・・・「あんたは、勉強もそれくらい一生懸命やってくれたらねえ」なんて言われながら、夢中になっていた時期は、多くの人にあるでしょう。
夢中になるものと、夢中であり続ける才能に恵まれた人たちに、そのまま突き進んでいく力をくれる絵本です。いつかは手放す日がきてしまうにしても。人からみたら、価値のないことに見えるかもしれないけど、ね。
わりと長く、展開も地味なので、大勢での読み聞かせよりも、わが子に読んであげたい一冊です。
「こどもってね・・・」
こどもってね、小さなひと。でも、いつの間にか大きくなる。子どもってね、手も足も耳も小さいけど、頭の中は大きなワクワクでいっぱいで、おとなを楽しませる。子どもってね、へんてこなものが好き。子どもってね、大きな声で泣く。子どもってね、なんでも吸い込む。子どもってね、大きな世界で生きてる。子どもってね・・・
こういうテーマの絵本によくある、あまりに叙情的だったり、いかにもわかったようなことを言ったり、変にシニカルだったりすることなく、「こども」のよさ、「こども」時代のよさ、こども自身も気づいていない「こども」の世界が紡がれます。
子どもって、すごいですよね、実際。子どもたちが思っているより、ずっとすごい。
こどもってね、みんな いつか おとなになる ちいさなひと。
やがて、学校を そつぎょうして しごとをする日が やってくる。きっと たのしいだろうな。もじゃもじゃのあごひげや くるんとまいたくちひげを はやしたり、かみのけを みどりいろにしたり するのかな。へんなことで ごきげんななめに なるのかもしれないね。でんわがならないとか 車がすすまないとか。
でも、いまは そんなこと かんがえなくたって いいんじゃない?
こどもってね、ちいさな ひと。いまはまだ ねむりにつくまで やさしく みまもっていてほしいんだ。まくらもとに ちいさなあかりを ともして。
本文より
個人的には、教室で読むなら、何ページか飛ばしてもいいかな、と思うところもありますが。
今を肯定し、未来のほうも少し照らす、そんな語りかけがいいなあと思います。言葉はていねいに磨かれていて、見開きごとに大きく描かれる、子ども一人一人の姿も、とても素敵です。
・・・・・
いかがでしたか?
いかにも卒業!というわけではないけれど、これから広い世界への1歩を踏み出す6年生に届くといいな・・・という絵本を選んでみました。
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