世界中の、駅の前や、公園や、歩道の端に花壇があり、そこにいつでもきれいな花が咲いているのは、とてもすてきなことじゃないかな、と思います。
自然に伸びる野の草花も、もちろん美しいけれど、誰かのために誰かがしつらえた花壇の花は、そこに明かりをともしたような、ぬくもりがあります。
誰かに届くことを、たのしみにする誰かの気持ち。
目に見える、やさしさ。
舞台は、大恐慌直後のアメリカ。
家族の暮らし向きがよくなるまで、町でベーカリーを営むおじさんのところに滞在することになったリディアは、明るく前向きな女の子。
おばあちゃん仕込みの”みどりのゆび”をもつリディアは、得意のガーデニングで、町の人たちに「にっこり」をふりまいていきます。
ただひとり、おじさんだけはいつもしかめつらですが、かしこいリディアはそれが、本物のしかめ面じゃないことは最初からわかっています。それに、こころを込めて育てたお花を見て、にっこりしない人なんていないっていうことも。
だから、ある素敵な計画を思いつくのです・・・
おはなしは全部、リディアから家族に宛てた手紙で語られます。
心おきない相手へ向けられた親密な言葉は、その素直さが、思いがけないかたちで、胸をつくこともあり、また、絆や信頼を、物語に丁寧に裏打ちしていきます。
リディアの、純粋に誰かを喜ばすことに、たのしさを感じる性分は、ほんとうに、気持ちがいい。
ひたむきさがもたらす、ささやかな幸せが、
こころを満たします。
【この本のこと】
「リディアのガーデニング」
サラ・スチュワート 文 デイビッド・スモール 絵
福本友美子 訳 アスラン書房
【だれにおすすめ?】
読んであげるというより、自分で読む絵本。
小学校高学年くらいから、おすすめです。
私は、もう何年も、庭いじりの季節になると取り出し、読み返し・・・その度に、ぽろっと涙がこぼれてしまいます。
誰かをよろこばせたい、という気持ちって、なんてすばらしいんだろう・・・!と。
最初の見返しから、最後の見返しまで、余すところなく物語が続き、広がるのも、贅沢だなあと思います。
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