お母さんになりたての頃は、「はれちゃんのママ」と呼ばれることになんとなく違和感があったなあと、ぼんやりと思い出します。
ママになってまだ日が浅くて慣れない、とか、わたし個人の名前があるのになー、とか・・・そう、個人と個人で付き合っている感じがしないのが、いやだったのだろうな。
今は、どーでもいいのです。
もはや、まごうことなく「はれのママ」だし。わたし個人ではなく「はれのママ」と存在していることも多いし。なんなら、その立場が好きだしね。
ニャンイという、厄介者の猫がいました。ふとっちょで、食いしん坊で、弱いものいじめの札つきの猫でした。
しかも、あろうことか、生まれたてのまだあたたかいたまごが、ニャンイの大好物だったのです。
ある朝、通りかかった鳥小屋の中に、おいしそうなホカホカのたまごを発見したニャンイは、うんぐと丸呑みにしてしまいます。ごちそうさま、とご満悦だったニャンイですが、それから1日過ぎ、2日過ぎ、おなかがだんだんふくらんできました。そして・・・
そう。トイレで出てきたのは、うんこではなく、ひよこ。
半信半疑で、なんとなくの流れで、わけのわかないまま、すり寄ってくるひよこをぺろりとなめたその時から、ニャンイの何かが変わります。
そしていつしか時がすぎ、みんなニャンイの名前を忘れて、「ピヤキのママ」と呼ぶようになったのでした。
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親になるのに、覚悟なんていらない。
わたしたちには、愛でる本能が備わっていて、そして、ずば抜けた存在の前では、曖昧なアイデンティティなんてちっぽけなものだったりするのです。
ママって、こうやって生まれるんだよって、子どもにもちゃんと伝わります。
どうみてもふてぶてしいのに、どこか愛嬌のある、ニャンイの表情やありさまがとってもいい♪
作者について
ペク・ヒナ
1971年、 ソウル生まれ。韓国の梨花女子大学卒業後、カリフォルニア芸術大学でアニメーションを学び、アメリカでアニメーターとして働く。韓国に帰国後、絵本の制作。2020年には、絵本界のノーベル賞ともいわれる「アストリッド・リンドグレーン記念文学賞」を受賞した、韓国を代表する世界的絵本作家。
自称「人形いたずら作家」。手作りの人形、緻密なセット、その世界観を表すために小道具や照明にも徹底的にこだわり、構成やテキストと一体化させて1冊の絵本を作り上げる。1冊の絵本ができるまでに、10ヶ月かかることもあるとか!
代名詞でもある、粘土の人形は、表情豊かを通り越して、表情だだもれ。何度見ても見飽きず、最高です。
↑ こちらからメイキングも見られます。すごいっ
そのほか
初期の作品「お月さまのシャーベット」は、紙をメインの素材にしたペーパークラフトで世界を作っています。幻想的でノスタルジックな物語がこの手法で引き立つ、大好きな絵本。
暑くて暑くて寝苦しい夜に、あるアパートに起きた出来事。
暑さでポタポタ溶け出したお月さまを、タライで受け止めたおばあさん。すっかり溶けたお月さまの滴でシャーベットを作って・・・
こちらも、メイキングあり。アニメーションでも見てみたいな・・・
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