これはわたしの庭のバラの花。
これはわたしの庭の、
バラの花でねむるハチ。
これはわたしの庭のバラの花でねむる、
ハチに日かげをつくっている、
すっとのびたタチアオイ。
これはわたしの庭のバラの花でねむる、
ハチに日かげをつくっている、
すっとのびたタチアオイのわきの、
まるいオレンジいろのきんせんか。
これは・・・
(本文より)
とても美しい、花壇の積みあげ歌です。
初夏の、静かな昼下がりの庭。
うっとりとふくらんでいく、言葉と、イメージ。ページから、あふれていく花々。
きんせんか、百日草、ひなぎく、つりがねそう、ゆり、ぼたん・・・
ページの隅から顔を出し、花と共にふえていく小さな生き物たちも、花の間や葉の裏で、のどかにそれぞれの営みをはじめ。
まるで、気持ちのいい日の、うたたねの夢のように、うたかたの花園が、密やかに広がっていきます。そう、美しく咲き誇る花々の中に、ちいさな野ねずみがあらわれ、それをかぎつけた、ちぎれ耳の猫がやってくるまで。
・ ・ ・
そして、すべてが終わり。
また、最後に残る
初夏の静寂と、1本のバラの花。
ただ唯一の、目撃者である、わたし。
【この本のこと】
「わたしの庭のバラの花」
アーノルド・ローベル 文
アニタ・ローベル 絵
松井るり子 訳
らんか社(セーラー出版)
【だれにおすすめ?】
読んであげるなら、3歳くらいから。
ページに溢れていく花々、虫たち。それを眺めているだけでも楽しく、年齢は選びません。
ただ、美しく言葉と絵が積み上がるだけでなく、少しずつ忍び寄る不穏な空気からのユーモラスなオチで、物語としても満足。
お花を贈るかわりに、贈り物にしても。
わたしの庭のバラの花 /らんか社/ア-ノルド・ロ-ベル
posted with カエレバ