秋は、いつも、短い。
そのほとんどが、夏からの途中で、冬への途中。
はや足で、冬に向かっているんだ・・・
なんて、急に感じて、心細くなる、人恋しくなる、あったかいものにひかれる、そんな季節にひらきたい、小さな物語集。
きつつきが、お店をひらきました。それはもう、きつつきにぴったりのお店です。きつつきは、森じゅうの木の中から、えりすぐりの木をみつけてきて、かんばんをこしらえました。
かんばんにきざんだ、お店の名前は、「おとや」
できたての音、すてきないい音、おきかせします。
しぶおんぷ一こにつき、どれでも100リル
そう、書いてあります。
森の動物たちは、いろいろな木の音や、ときどきは、自然の音を、聞かせてもらいに、やってきます。
たぬきの始めた、幸運しか当たらない「おみくじや」さんは、意外なことに、動物たちに、ちょっと不評でした。
はりねずみの「ぱけっとや」さんは、いろいろな木の葉のポケットを、服にぬいつけてポケットにしてくれます。
ぎんめっきごみぐもの、巣に糸で文字を書くひとり遊びが、ひょんなことから「でんごんばん」になりました。
あつい日には、きつねが、影を売ってくれます。
「空のおふねや」「おやおやや」・・・
広い空のもと、木々の屋根のした、葉っぱの影。ズームインしてみると見える、小さな小さな営み。
うれしいも、がっかりも、わくわくも、満足も、心配も、あるべき場所に、きちんとあって、小さいけれど、確かな鼓動が聞こえて、だから、あたたかい。
今は、国語の教科書にも載っているみたいですね。
カラーの挿絵も美しい、動物たちのものがたりが、12編はいった短編集です。
【この本のこと】
「森のお店やさん」
林原玉枝 作 はらだたけひで 絵
アリス館
【だれにおすすめ?】
きつつきの「おとや」のお話が、小学3年生の国語の教科書に、でてきます。
自分で読むなら、2、3年生くらいから
ひとつひとつのお話は短いので、娘が4歳のときに読んだのですが、まだピンときていませんでした。
どのお話もかわいく、易しく感じるのですが、子どもがその世界を十分にたのしむには、想像力がある程度必要なのだと思います。
やわらかな色彩の挿絵も、物語とよく合い本当に素敵です。
続編に「ふしぎやさん」があり、こちらは、どちらかというと、春の印象です。
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