ー「おしまいに なってしまうものは、なんにもないの。べつのばしょで、べつのかたちで はじまるだけのことなの。」
「どんな ものでも?」と、おとこの子は ききました。「ええ、どんな ものでも。」と、おかあさんは こたえました。
夏の終わり。
あかるかった、空の色が、夕方のむらさき色にかわり、一日が、終わろうとしています。
男の子が、窓からのぞき、たのしかった一日を、ひとつひとつ思い出しながら、昼がおしまいになって、残念だな、と思っています。
「どうして、ひるは、おしまいになってしまうの?」
そうたずねる男の子に、おかあさんは、夜がはじめられるように、と、答えます。そして、昼は、おしまいになるわけではなく、べつのところで、また、はじまると。
風はやんだら、遠くへ吹いていき、
また、どこかで木をゆらし
飛んでいったたんぽぽの綿毛は、
だれかの庭で花を咲かせ
道のおわりは、むこうの道のはじまりで
くだけた波はまた、
海にもどり
べつの波になり
つもった木の葉は、
土になり
あたらしい命の栄養になる。
秋のおわりは、冬のはじまりで、冬がおわれば・・・
行き止まりで、終わりになるものは、なにもなくて、ぐるぐる、ぐるぐる、続いている。
こんなに、うれしいことはないくらい、いつでも新鮮で、こころ満ちる、大発見だと、思います。
【この本のこと】
「かぜはどこへいくの」
シャーロット・ゾロトウ 作
ハワード・ノッツ 絵
松岡享子 訳
偕成社
【だれにおすすめ?】
読んであげるなら、4歳くらいから。
お母さんと子どもの、何気ない会話を通して、すべての自然の営みに通じる大切なことが、ありありと伝わります。
それは、いつも目の前にあり、とても当たり前のようで、慌ただしさの中では目を向けることはなく、おとなでもハッとしてしまいます。
白黒の線画も優しく、広い年代におすすめの絵本です。
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