自分の身に起きる、悲しい出来事を想像して、涙をながす・・・
時間をもてあました自分の部屋で
午後の教室で
家族で移動する車の中で
子どもの頃から、思春期になるまで、ひまさえあれば、そんなひとり遊びに耽りました。
そして、おとなになったある日。この、物語の主人公のふくろうくんの涙の使い方を知り、目からウロコが落ちました。
こんな、妄想の使い方もあったんだ!
なんて、ロマンチックなんでしょう。
ふくろうくんは、「きょうは、なみだでおちゃをいれようっと」と思いたつと、湯わかしをひざにかかえて、いすに座ります。
そうして、
ストーブのうしろに落ちて、見つけられっこないスプーンや
誰も見てくれる人のいない朝や
短くなって使えないえんぴつ
のことを想い、涙をながし、その涙でお茶をいれ、夜のひとときを過ごすのです。
ああ、ふくろうくん。
「ながした涙でお茶をいれる」のではなくて、「お茶をいれるために、涙をながす」なんて、なんて、おとなっぽい、想像力の使い方でしょう・・・
わたしも、まだ、涙のお茶を飲むことが、できるかな。
カップ一杯分の涙のために、ちっちゃな出来事も留めることができるように、こころの窓をきれいにみがいておこう。
そして、いつか、ふくろうくんのように、「なみだのおちゃは、いつでもとてもいいもんだよ。」って、しぶくつぶやくんだ・・・
・ ・ ・
「なみだのおちゃ」は、5つの、小さなおはなしがはいっている本の中の、1話です。
戸を鳴らす風と格闘したり、ベッドの足もとの自分の足のふくらみが気になったり、階段の上と下に同時にいる方法を考えたり、家までついてくるお月さまを説得したり・・・
どの話でも、ふくろうくんの、まわりの評価を全く必要としない自由な考え方がいい!
こった頭をほぐしたいおとなにも、どうぞ。
【この本のこと】
「ふくろうくん」
アーノルド・ローベル 作 三木卓 訳
文化出版局
【だれにおすすめ?】
読んであげれば、4歳くらいから楽しめます。
ただ、小さな子でも、次々と可笑しなふくろうくんの行動がおもしろく、わからないとは言わないけれど・・・この妙味を味わえるのは、実は、10歳くらいからではないでしょうか?
おとなが読めば、ふくろうくんが探求者にまで見えてしまう。奥深い世界です。
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