子どもたちは、どんぐりが落ちていると、足をとめて拾わずにはいられません。おとなだって、ひとつ拾えば、その先にひとつ、もうひとつ・・・ついつい夢中になってしまうのです。
そんなわけで、秋になると、お山の道や公園だけでなく、家の中にもコロコロころがっている、どんぐり。
ひろっても楽しい、飾っても楽しい、工作しても楽しい、そして、読んでも楽しい♪たくさんのどんぐりの絵本の中から、どんぐりだからこその絵本、ほんとうにおすすめのものだけを選んで、ご紹介します。
どんぐりのことを知るための、おすすめのどんぐり図鑑もあるよ♪
歌って踊って♪どんぐりのわらべうた「どんぐりころちゃん」
♪どんぐりころちゃん あたまはとんがって おしりはぺっちゃんこ どんぐりはちくりしょ ぽーん♪
どんぐりのかわいいわらべうたが、絵本になっています。
おおきいの、ちいさいの、まるいの、ほそいの。秋の雑木林で、どんぐりたちが歌って踊る。巻末に楽譜とあそびかたも載っているので、読むだけでなく遊べます。
赤ちゃんなら、お母さんにだっこしてもらって。小さい子は、自分でノリノリで。みんなどんぐりになって、最後は、ぽーん!と飛んで転がって・・・子どもたちとやると、本当にかわいいです。
この絵本を読むと、ちょっと思います。帽子じゃなくて、パンツなの・・・?って。どんぐりの殻斗のことを「ぼうし」って呼ぶけれど、このわらべうただと、とんがっている方が頭で、ぺっちゃんこの方がおしりなんです。(1歳くらいから)
我が家で楽しんでいたのは、わらべうたがそのまま絵本になっている、こちらの「どんぐりころちゃん」。
こちらは、少しお話になっています。リスに追いかけて、逃げて、ころがって、葉っぱのお布団で、春の芽吹きまでが描かれます。最後の「ぽーん!」もないので、わらべうたとして楽しむには上の絵本のほうがいいけれど、いろんな種類のどんぐりが登場したり、どんぐりの絵本として読むには、こちらもたのしいです。
音もかわいい秋色あふれる「どんぐりとんぽろりん」
ぱらぱら とんとん ぱんぱら とん
どんぐりが落ちてくる大きな木にやってきた、りすとくま。どんぐりをたくさん食べて、おうちに持って帰って、冬に向かう・・・たったそれだけの、小さな小さなおはなし。
でも、かさこそこそかさ、むぐむぐぽりぽり、ぱらんこぽろんこ、せっせっせ。そんな秋の音と、つややかなたくさんのどんぐり、柿本さんの描く秋の色があふれてくる、小さな子と楽しむ秋を代表する絵本の中の1冊です。
全編に自然や生き物すべてへの愛しみも流れ、あたたかな気持ちになります。(1歳くらいから)
どんぐりって美味しいんだよ♪「どんぐりないよ」
りすの子が、どんぐりを探しに丘の上へとっとことっとこ。
でも、へんだな?どんぐりは3つしかありません。森へ行っても、池へ行っても見つかりません。「みんなでたべるぞ!」とはりきっていたりすの子は、泣きべそで家に戻ってきました。だって今日は、どんぐりパーティーだったのです。
しょんぼりしているところにやってきたお友だち。その手にあるカゴの中には・・・どんぐりパン!どんぐりハンバーグ!どんぐりケーキ! どこにもどんぐりが落ちていなかったのは、そういうわけだったのです。
どんぐりって、美味しいんですよ。我が家でも、拾って粉にして、クッキーを作ります。食べたら読もう♪読んだら食べてみよう♪
秋の七草のオミナエシをはじめ、コスモス、ガマの穂など、秋の風景も楽しいです。(2歳くらいから)
いろんな木の実が出てくるよ「たからものみつけた!」
リスくんは明日のお父さんの誕生日ために、木の実をたくさん集めて穴にうめ、落ち葉で目印をつけました。でも、その夜に吹いた風で落ち葉がつもり、うめた場所がわからなくなってしまいます。
あわてて探すリスくん。その様子をみた友だちの動物たちがやってきて、お手伝いをはじめます。でも、リスくんは困り顔。だって、お友だちに内緒で、全部ひとりで集めた木の実。見つけたらみんな、食べたがるだろうな・・・
ピュアな友情に、ちょっぴり反省のリスくんー少し道徳的すぎるような気もするけれど、わかりやすく気持ちが書かれているので子どもたちは共感しやすい。なにより、秋の真っ盛りのきれいに色づいた森の景色。どんぐり図鑑で調べたくなるくらい一つ一つ丁寧に描かれている、ツヤツヤのどんぐりや木の実が目に楽しいです。(4歳くらいから)
どんぐりを仕事に「ねこのセーター」
さむがりで、なまけもののねこ。ねこのセーターは、ぶかぶかで、ぼろぼろで、おおきな穴が2つもあいています。ねこはさむがりなくせに、こんなセーターを着ているのです。
ねこは、毎日おうちで、どんぐりに帽子をかぶせる仕事をしています。
「ぼうしいれ」なんて書いた箱を、ちゃんと用意したりして、ねこは、どんぐりになかなかやさしいのでした。でも、なまけものなので、3つばかりぼうしをかぶせると、もうめんどうくさくなって、なまけはじめて、どんぐりたちにばかにされて、くやしい思いをするのです。
ねこは、さらに、せっかちで、おぎょうぎがわるくて、はずかしがりやで、なきむしで、ちょっとだらしがなくて、はやおきなのです。でも、まったくもう、憎めないねこなのです。
そんなねこの、愛着に溢れたゆるっとした一日を描いた、ゆるっとした愛着まみれの絵本。どんぐりがたくさん並んでいる様子って、好きなんです。”どんぐりに帽子をかぶせる仕事”って、最高です。(4歳くらいから)
こちらで、もう少しくわしく紹介しています。
これぞどんぐりの背くらべ「どんぐりと山猫」
ある土曜の夕方、一郎のうちに届いた1通の手紙。それは山ねこからで、たどたどしい文字で裁判へ招待するというようなことが書いてありました。よろこんだ一郎は、翌朝さっそく出かけます。栗の木、滝、きのこたちに道を聞きながらようやく辿りついたところには気味の悪い男がおり、一郎を山ねこのところへ連れていきました。そこで、これから、どんぐりたちの裁判が行われるというのです・・・
言わずと知れた、宮沢賢治の名作。賢治作品の中でも、小さい子も楽しめる物語のひとつです。いろんな画家が絵をつけていますが、子どもと楽しむなら、この絵本がいいかなと思います。
田島征三さんならではの大胆な構図はお話を盛り上げるし、絵本らしい親しみと、物語の秘める得体の知れない不気味さのバランスが絶妙で、世界観がちゃんと伝わります。(5、6歳くらいから)
ドングリたちの長い旅「ドングリ・ドングラ」
海の向こうの山から火があがる場面から、この絵本は幕をあけます。
「ドングリ、ドングラ〜!」
たくさんの種類のたくさんのドングリたちが集まった森の広場に、トチノミたろうのかけ声が響き渡りました。赤い火をふくあの山へ、長い長い旅がはじまるのです。
楽器や武器や道具を手にして、各種族の民族衣装のようなものを身につけた、数えきれないほどのドングリの勇ましい大群は、リスとの戦いや厳しい冬山を経て、油断すると芽が出てしまう春の野原をすぎ、砂漠を抜け、大海原へ。荒れる海を乗り越えた先、焼け野原になった火山の島に辿り着いたドングリたちは・・・
うっかり芽が出てしまったものたちはそこに根をはり、海へ出る船を浜で見繕い、それぞれが手にする道具や背負う葉や枝にまですべてに意味があることも、後々わかっていきます。物語とドングリの一生が見事に融合した、イチオシのドングリ絵本です。(4、5歳くらいから)
「たったひとつのドングリが」
たった ひとつの ドングリが / 木に そだつ / 木が そだてば / トリが くる。/ トリが ゆすって / たねが おちる。/ ひとつぶの たねから、/ はなが さく。
花が咲けば実がなり、実がなるとリスがきて、リスがいるところにヘビがきて、ヘビを狙ってタカがきて、タカが枝を揺らして・・・
美しい絵と短い言葉で紡がれる、たったひとつのドングリから生まれる、豊かな森。ページ毎にスポットのあたるものたちだけでなく、言葉では触れきれないほど、そこにあるすべてにつながりが感じられます。無関係にそこにあるものはいない世界。
大きな”とき”の巡りの中で、すべてのものが影響し合い、支え合うしくみが、この小さな絵本の中に完全に描かれていることに、感動します。すばらしい絵本です。(4歳くらいから)
どんぐりを知る
①「ぽっとんころころ どんぐり」
準備中
②「どんぐりかいぎ」
毎年同じ場所でどんぐりをひろっていると、年によって多かったり、少なかったりすることに気がつきます。なんとなくそうかな、天気のせいかな、なんて思っているその現象、ちゃんと理由があるんです。
ある、北国の森の中。秋になると、どんぐりの木たちが、たくさんどんぐりを落とします。森の動物たちがうれしそうに食べるのを、どんぐりの木もまたうれしそうに見守ります。なぜなら、動物たちは、食べきれないどんぐりを地面にかくし、芽を出す手伝いをしてくれているのです。
ずっとずっとそうやってきましたが、だんだん、うまくいかなくなってきました。動物たちは、どんぐりをたくさん食べて元気いっぱい。子どもも増えて、春までにどんぐりを全部食べてしまい、地面にうめておくことがなくなり、芽が出ないのです。困ったどんぐりの木たちは、集まって会議をひらきました・・・
定期的に繰り返す、どんぐりの「なりどし」と「ふなりどし」。その理由はいくつかあるようですが、結果的にこれが動物の数を調整し、どんぐり自身の繁殖も助けています。そのことを、物語のかたちでわかりやすく語った絵本です。(4歳くらいから)
③「どんぐりノート」「どんぐりハンドブック」
ひろってきたどんぐりをおうちで並べてみると、細かったり丸かったり小さかったり長かったり、みんな違う。それもそのはず「どんぐり」とひとことで言っても、ナラ・カシ・シイetc・・・いろいろな種類があり、それぞれ暮らしや成長も実のなり方や葉っぱの形も、違うのです。
この絵本は、日本で見られる21種類のどんぐりの仲間を、丁寧で精巧な美しい絵と端的なのにかゆいところに手が届く説明で紹介しています。
どんぐりの実だけでなく、葉っぱが大きな写真で載っているのも種類の違いがわかりやすい。それぞれの、木の全体画、殻斗の細かな観察、実のなり方、花のつき方、名前の由来、木の使い道・・・どんぐり全体としての生態も、もちろん。
しかもしかも、豆知識、食べ方や染め方や工作での使い方・・・まで!
もっとくわしい本もあるけれど、よほどのどんぐりのプロを目指さないかぎり、この本があれば大丈夫。おとなでも、どんぐりについて知りたいことは、たいてい載っていると思います。
わかりやすいし、見やすいし、いうことなし。こういうのほしいけど、使うかな・・・と思っている人に言いたい。あれば、使います!
同じ作者のハンドブック形式の図鑑もあります。上の絵本が精巧な絵で描かれているのに比べて、こちらは写真(実は、写真より大きな絵の方がわかりやすいのですが)。書かれていることは、ほとんど一緒です。おとなが見たり、お散歩やハイキングに持ち歩くなら、こちらがおすすめです。
いかがでしたか?
秋のたのしみの広がるどんぐり。お気に入りの絵本や図鑑を見つけて、もっともっと仲よくなってみましょう♪
・・・・・・・・・・