もしわたしがねがいごとをしなかったら、どうなっていたかしら。
ー 本文より
これは、願いごとのおはなしです。
孤児のアイビーは、どこかにきっといるはずの、あたたかく自分を迎え入れてくれるおばあちゃんの家を目指して、孤児院を抜け出し、見知らぬ街におりたちます。
同じ頃、その街のおもちゃやさんでは、クリスマス人形のホリーが、自分の「クリスマスの女の子」が迎えにきて、その手でだっこしてくれるのを待っています。
雪の舞い、日の暮れる中、あたたかな窓のあかりをながめながら身寄りのない街をさまようアイビー。
とうとう閉店時間をむかえて、いじわるなおもちゃのいる店内に残ってしまったホリー。
おもちゃやの見習いの少年。
子どものいないおまわりさんの夫婦・・・
クリスマスイブの1日。
起こるひとつひとつの出来事が、ふたりの願いごとがかなうときにむけて、1歩1歩進んでいきます。ときどきじゃまがはいっても、それさえも、幸せな瞬間をむかえるための橋となるくらいでしかありません。
これは、願いごとのお話ですが、ただ願いがかなう、奇跡みたいなお話ではありません。
与えられた状況をひっくり返すのは、じぶん次第!と思える、元気のでるお話です。
明るく、前向きに、一生懸命に。
小さなアイビーが、願いをひとときも忘れずに、1歩をふみだしたように。 人形のホリーが、強く強く、祈ったように。
行動すること、準備をすること、続けること。願いごとをかなえるために必要なことは、いくつもあるかもしれません。
でも、絶対にかかせないことは、ひとつだけ。それは「ねがいごとをする」ということ。
すべては、そこからはじまります。
【この本のこと】
「クリスマス人形のねがい」
ルーマー・ゴッテン 文
バーバラ・クーニー 絵
掛川恭子 訳
岩波書店
【だれにおすすめ?】
もとは児童文学なので、文章は長く、読んであげるというよりも、自分で読む絵本です。3、4年生くらいから。(でも、うちの子たちはこの絵本を読んでもらうの好きです。長くて大変だけど・・)
長めのテキストをゆっくりと追っていく、そのリズムで、夢が叶う時に近づいていきます。
辛いこと、怖いことも起こりますが、アイビーとホリーの強い思いは、裏切られることはないと、信じて読み進めることができます。
みんなの思いや行動が、ひとつに集まる瞬間!
クーニーの絵も美しく、クリスマスの風景や光景を眺めるだけでも、あたたかな気持ちになります。
こころの底から残念なことに、現在(2022年11月)この絵本は品切れになっています。岩波書店なので、絶版にはならないとは思いますが・・・復刊して、また、多くの人に手に取ってほしい!
今は、こちらの、童話の形で出版されています。ルーマー・ゴッテンの人形の話を集めたシリーズの中の1冊です。
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