そとでは すべてが こおりつき、もみの は ひとつ、うごかない。はるか かなたの たきの ひびきが、ときの ながれの おとのように。
トムテは ひくく つぶやいた。
「どこへ ながれて いくのだろう。みなもとは どこだろう。」
「トムテ」より
しんしんと冷える真冬の夜空の下。目をさましているのは、こびとのトムテただひとり。食料小屋、家畜小屋、母屋の主人夫婦、そして子どもたちのもとも、そっと見回る。
もう、ずっと昔から変わらずに続く、この夜のひそやかな習慣の中で、トムテが抱くひとつの疑問。
トムテが、どうしてもわからないこと・・・それは、時の流れ。
子どもが親になり、またその子どもが親になる。にぎやかに楽しく暮らし、年老いて、どこかに行ってしまう ーそれが不思議なのです。
わたしたちの持っている、トムテとはまたちがう、素晴らしい営み。流れる、限りある時間のなかを生きているということ。
いつまでも生きるトムテにはわからないことが、わたしたちには、わかります。時間は、ただ通り過ぎて、どこかへいってしまうのではなく、すべてこの体の中に、血や肉となって積み重ねられていくのだと。
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12月10日のアドベントカレンダーでも登場した、北欧の小人。
スウェーデンで古くから愛される、その小人たちにまつわる北欧の伝承を描いた詩に、静かで美しい絵をそえた絵本です。
1882年に発表された、スウェーデンの国民的詩人ヴィクトール・リードベリのこの詩は、近年の北欧の小人のイメージの確立に寄与したそう。(「名作に描かれたクリスマス」参考)
この頃では、クリスマスが近づくと、日本の街の雑貨屋さんなどでかわいいトムテの人形を見かけますが、ここで描かれるのは、お店に並ぶかわいらしい妖精のような小人ではなく、寒い国に根ざした、旧習の中に生きる小人です。
大きな時の流れにの中にいる人間と、その外の広大な場所で流れを見守る小人。
どちらへもの愛しみを感じます。
あっという間に、12月も3週目に突入!慌ただしい日々の中で、この絵本でちょっと立ち止まって、思いを馳せましょう♪(現実逃避ともいう)
トムテの巻末に、「外国語版の絵本『トムテ』には、リードベリの詩を用いたものと、それをもとにアストリッド・リンドグレーンが書き改めた文によるイギリス版・デンマーク版等があります。この日本語版は、リードベリのすぐれた詩のスウェーデン版をもとにしました」という注釈があります。
そのリンドグレーンの文章のほうが、こちら。あたたかい季節を待ちながら、家族や動物たちを見守るおだやかでやさしい小人です。
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