あの人には、何にしよう・・・考えるのがたのしかったプレゼント選びですが、そろそろ、決めなければいけません。
街を歩きながら見つけたり、ネットのお店をまわるのも楽しいのですが、物語の中には、手作りの贈り物が、たくさん出てきます。
中には、1年をかけて、じっくりと作ることも!
戦後間もなくの、お話です。
すり切れて小さくなってしまった娘のアンナのオーバーを新しくしてあげたいと、お母さんは思いました。
けれど、店はからっぽ。お金だって、ありません。
お母さんは考え、そして、お金のかわりにおじいさんの金の時計を持ってお百姓さんのところにいき、羊の毛と交換できるか、聞きました。
こころよく引き受けてくれたお百姓さんですが、羊の毛は、春にならないと、刈れません。そこでアンナは、春になるまで、待ちました。
ようやく春になって、羊の毛を手にしたアンナとお母さんは、古いランプを持って、今度は、糸紡ぎのおばあさんのもとへ。
そして、初夏に紡ぎ上がった糸を、夏のおわりに、コケモモを摘んで、赤く染めます。
さらに、機屋さんに布地に織ってもらい、仕立屋さんで寸法を測り、あと、1週間、待って、もうすぐクリスマスの、ある日。
アンナは、ようやく、とびきり素敵な新しいオーバーを、手にしました。
お母さんの知恵と、粘り強さと、アンナの、ゆっくりと、辛抱強く待っていた時間と、みんなの手とやさしさでできた、それはそれは、素敵なオーバー。
オーバーを囲んでクリスマスを祝う、アンナの、みんなの、表情が、それぞれの誇りと満足を、語っているようです。
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いつも忙しいサンタさんに、1年かけて贈り物を作った、ハリネズミの夫婦のもいます。
遠い北の国で、ハリネズミの夫婦、「とんが」と「ぴんが」が、ニコラスおじいさんと一緒に、暮していました。
ある、クリスマス・イブの日。
とっておきの赤い服に着替えて、世界じゅうにプレゼントを配りにでかけたおじいさんを見送ったふたりは、おじいさんは、プレゼントをもらうことがないんだと、気がつきました。
来年のクリスマスには、あたたかいくつしたをあげようと、決めたふたりは、さっそく、プレゼントを手にいれに、出発。
ハリネズミにもできるお手伝いをしながら、羊の毛を手にいれ、紡いでもらい、染めてもらい、編むのがちょっと、一苦労。
一年かけて、素敵なくつしたを手にし、やっと家路につくと・・・
ハリネズミの夫婦のとんがとぴんがの、ちいさいのに、元気で健気で一生懸命なようすが、とってもかわいらしくて、ゆかい、ゆかい。
スズキコージさんの不思議な世界と、ほのぼのとしたお話しが、たのしく解け合って、こころに鮮やかに刻まれるクリスマス絵本です。
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来年こそは・・・
1年間、その人のクリスマスを思って作る
そんな贈り物を、してみたいなあ・・・
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【この本のこと】
「アンナの赤いオーバー」
ハリエット・ジィーフェルト 文 アニタ・ローベル 絵
松川真弓 訳 評論社
「とんがとぴんがのプレゼント」
西内ミナミ 文 スズキコージ 絵 福音館書店
【だれにおすすめ?】
「アンナの赤いオーバー」は、実話に基づいたお話です。
5歳くらいからたのしめますが、小学生くらいだと、より深く物語を理解できると思います。
表の見返しには、青いオーバーを着たアンナ。
裏の見返しには、赤いオーバーを着たアンナ。
女の子から、少女へ・・・
背の高さだけでなく、1年の年月を感じます。
「とんがとぴんがのプレゼント」は、画家が代わって近年に改作復刊されました。
スズキコージさんの描く細部は、国も時代も不明なのに説得力があり、夢の中に灯るあかりのように、惹きつけます。
4、5歳くらいから。