スモールさんという小さな紳士が、いろいろな職業をもくもくと誠実にこなすこのシリーズをたのしみながら、子どもだったわたしは、どこか、こころをざわつかせていました。
スモールさん、いつもひとりで仕事ばっかりして、趣味もなさそうだし、けっこう孤独なのでは・・・って。
なので、この本に出会ったときには、なんだかホッとしたものです。
この本の中で、スモールさんの職業は会社員。(たぶん・・・きちんとしたスーツで、朝、車ででかけていくので)描かれるのは、その仕事風景ではなく、家庭での様子、夫として、父としての姿です。
これが、まあ、なんと、なんと、すばらしいこと!
まだ、陽のあるうちに帰宅し、家族で食卓を囲むのが日課です。
会社から帰宅後は、ある日は洗濯の手伝いをし、また別の日は奥さんの好きな絵を壁にかけ、台所の水漏れを直し、夕方、庭の草刈りまでしてしまうことも。
休日には、家族で買いものや教会に行き、畑仕事をし、さらに、お料理だって手伝うのです。
眠る前の絵本タイムも、スモールさんが引き受けるのですよ。
もちろん、奥さんは、日々の家事をいきいきと手がけ、夫婦はいたわりあい、相手を休ませてあげることも、忘れずに・・・
そんな両親をみながら、ほがらかに育つ子どもたちは、たのしげにお手伝い。これを理想といわずに、なにを理想だというのでしょう!
どんな仕事にも、的確に従事するスモールさんは、夫としても、父親としても、非の打ち所のない男だったのです。
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スモールさん、ときどきは、もうすこし、だらだらしていいよー!と、これはこれで、気をもんでしまったりもします。
世の中のお父さん、タイトルにつられて、よくたしかめずにうっかり家族の前で読んでしまうと、いたたまれなくなってしまうかもしれませんので、ご注意を。
【この本のこと】
「スモールさんはおとうさん」
ロイス・レンスキー 作 わたなべしげお 訳
童話館出版
【だれにおすすめ?】
読んであげるなら、3歳くらいから
「ちいさいきかんしゃ」「ちいさいしょうぼうしゃ」をはじめスモールさんがいろいろな職業に従事するシリーズの1冊で、シリーズの他の本を読んでいると、よりたのしめます。
このシリーズは、絵と文章のバランスがとてもよくできていて、子どもにわかりやすく、集中しやすく、小さな子にもおすすめです。
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