いつの間にか来て、いつの間にか行ってしまう秋。
空の色から
落ち葉が風で鳴らす音から
雑草の顔ぶれから
八百屋さんの店先から
幼稚園に向かう自転車の風から
慌ただしい日々の間に、秋をつかまえる日々です。
夏の終わりの夕方、木の上で、やぶの中で、キリギリスが鳴き始めます。「霜がおりるまで、あと6週間」。古くからの言い伝えです。
黄金色の小麦を刈りとる音
色を変える木々
つやつやした、茶色い木の実
乾いた葉や枝
かがやかしい秋の日差し
オリオンのほしぼし
収穫がすんだひととき・・・
移りゆく季節のみせる、一瞬ごとのかがやき、そこで息づく小さなものたち。
・ ・ ・
澄んでいて心地のいい、いかにも秋らしい言葉と、あたたかい金色であふれだしそうな絵。
ページのあちこちからこぼれだす秋が、あつまって、たっぷりと水をたたえた大きな川みたいに、ゆっくりと流れて、わたしたちを乗せてくれます。
ゆら、ゆら、ゆら。
小さな子どもは、その意味のすべてを理解しなくても、耳をすまし、身を任せ、秋のよろこびを感じとるでしょう。
おとなは、ゆっくりとページをめくりながら、1年ぶりに、再会する秋を、日々の中で見逃していた秋を、すこしずつ思いだすでしょう。
まだ間に合う。
これから、秋は、いっそう深く美しいときを、迎えます。
【この本のこと】
「きんいろのとき」
アルビン・トレッセルト 文
ロジャー・デュボアザン 絵
江國香織 訳 ほるぷ出版
【だれにおすすめ?】
読んであげるなら5歳くらいから。
わからない言葉や、知らない情景もあると思うけれど、心地よい言葉に耳を傾けると、それすらもとても魅力的に感じると思います。美しさも伝わります。
全体に、隅々に、あちこちに秋が散りばめられた絵は、どのページも手を止めて眺めずにはいられません。おとなの人にも、おすすめです。
きんいろのとき ゆたかな秋のものがたり /ほるぷ出版/アルヴィン・トレッセルト
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