わたしは、とっても、たべることが大好き。
くいしんぼうなのです。
くいしんぼうというと、まだ、かわいらしくもありますけれど、実をいうと、とても食い意地がはっているのです。
ときどき、はずかしくなるほどですが、自分でも、どうしようもなくて困ります。
くいしんぼう、で、とどめておかないと。
ね、はなこさん。
愛すべきくいしんぼうの、おはなしです。
お百姓さんにかわいがって育てられたはなこさんは、とてもわがままな子牛でした。
あれは、いや、これも、いやと、ごちそうばかり食べていたので、むくむく大きく、ぴっかぴかの、立派な子牛なのでした。
春になり、たくさんの子牛たちと一緒に牧場にあずけられることになった、はなこさん。お百姓さんは、これで、わがままもなおるだろうと思いますが、とんでもない。
はなこさんは、牧場でもいちばんの女王になり、ほかの子牛をひきつれて、池のきれいな水や大きな木陰を独り占めにして、さらにわがまま放題なのです。
ところが、ある日、その食い意地があだになり、はなこさんが、たいへんなことに・・・
・ ・ ・
たいへんなわがままっ子の、はなこさんですが、ちっとも憎らしくなく、むしろ愛すべき子牛として届くのは、姿を紡ぎだす石井桃子さんの言葉が、やさしさや慈しみをたっぷりとたたえているからでしょう。
はなこさんにも、ほかの子牛にも、人びとにも、それから、読んでいる、子どもたちに対しても。
中谷千代子さんの絵も、同じ。
そして、この、品のいいユーモア!
こころをくすぐられたみたいに、くすくすと笑ってしまいます。
【この本のこと】
「くいしんぼうのはなこさん」
いしいももこ 文
なかたにちよ 絵
福音館書店
【だれにおすすめ?】
読んであげるなら、3、4歳くらいから。
小学校低学年での読み聞かせにもたのしいです。
この絵本を読むと、品のよさって大事だなあと、思います。美しい言葉と、表情豊かであたたかな絵と、品のいいユーモア・・・絵本の、そんなところを、大切にしていきたいものです。
そうそう、はなこさんの「はな」って、花じゃなくて、「鼻」なんですよ。
そんな可笑しいことも、さらっと語られていて、とっても好きです。