「一発逆転」
この言葉もたらす希望的な響きが、どれだけ人生を励まし、大きく広げ、そして、おもしろくしてくれていることか!
シンプは、ちっぽけで太っちょで、しっぽの切れた、誰が見たってみにくい子犬でした。
兄弟たちの中でシンプだけもらい手が見つからず、困った飼い主のおじさんは、シンプを車に乗せ、町外れのゴミ捨て場のそばにぽいっと捨ててしまいました。
ーどうしてわたしだけ、ひとりぼっちでおいていかれるの
ゴミ捨て場のネズミにすら追い払われ、道行く人にも相手にされず、猫に威嚇され、野犬狩りの男に捕まり、シンプはついに野犬収容所へ・・・
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人生のしょっぱなから悲運で、目も当てられない状況の続くシンプ。でも、ここで、シンプは自分で一歩を踏み出します。収容所へ向かう車から飛び降り、逃げて逃げて、サーカスのテント村にたどり着くのです。
そこで出会った落ち目のピエロのおじさんと心を通わせ、ついに、運命の扉を開くときがやってきます。
拍手喝采!
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シンプは、豊かに生きるために絶対に必要なものー居場所ーを得て、きっとずっと続くであろう幸せな結末を迎えました。
人生をあきらめないこと、知恵を使うこと、自分で切り開くこと。
「一発逆転」
これがあるから、人生はおもしろく、何があっても捨てたものではなく、でも、ただ待っていてもやってこない。
まずは地に足をつけて、今できることを、一生懸命にしないとね。
【この本のこと】
「ずどんといっぱつ すていぬシンプだいかつやく」
ジョン・バーニンガム 作
わたなべしげお 訳
童話館出版
【だれにおすすめ?】
読んであげるなら、4、5歳くらいから。
とてもスカッとする物語で、我が子たちは、シンプが活躍する場面では、何度読んでも、文字通り手をたたいて喜びます。子どもたちは、シンプの手にしたものがどんなに大切なものか、わかるのだと思います。
バーニンガムの初期の作品のうちの1冊で、いろいろな画材を使って塗り重ねたような絵も、物語同様に力強く、見応えがあります。