ねこの国をおさめる、金色のたてがみのレオ王は、とても立派な王様でした。
読み書きは、自分の名前すらもできませんでしたが、「がおう」のひと声で、みんな言うことを聞いてくれましたし、きれいなお妃さまもいましたし、黄金もどっさり持ち、立派な宮殿に暮らしていました。
たったひとつ、気がかりだったのは、北に住むオットー王の宮殿の壁には、なにやら不思議な宝がずらりと並んでいると、うわさされていたことでした。
そのうちに、レオ王とお妃に、王子が生まれました。
すばらしいことに、王子である赤ちゃんライオンには、背中につばさがはえていました。
ところがある日、王子は、まだじょうずに飛べないというのに、そよ風にのって、ふわふわと窓の外に流されてしまいます。
さまよって、迷子になった王子が、親切なふくろに助けられて、つれていかれたのは、北の国のしろくまのオットー王のもと。
そこは、とても古めかしく、豪華な装飾はありません。
ただ、壁にはずらりと、王子のみたこともないものが、並んでいて・・・
タイトルにある「つばさ」は、最初、王子の背中にはえ、体を自由にしました。
そして、その先で王子は、心を解き放ち、さらに遠くへ飛んでいくことのできる、もうひとつの「つばさ」を手にします。
王子を夢中にさせ、とても幸せな顔で眠らせ、学ばせ、自信をもたせ、成長させた、オットー王の宝。
心を羽ばたかせる、もうひとつのつばさ。
それが、本、なのでした。
挿絵は、ダイナミックかつ正確で隅まで美しく、そのうえ、表情豊かで、ほどよい遊び心も秘め、なんともチャーミング。物語の本質を、品よく語ります。
見返しには、AからZまでのアルファベットが、それぞれに世界の昔話をモチーフに描かれています。
堂々と、ゆるぎなく、愛とユーモアのこもった本の讃歌。
ただ、たのしむだけで、本のすばらしさが、伝わります。
【この本のこと】
「つばさをもらったライオン」
クリス・コノヴァー 作
遠藤育枝 訳
ほるぷ出版
【だれにおすすめ?】
読んであげるなら、4、5歳くらいから
つばさは・・・どんな力も、ただ持っているだけでは意味はなく、その使い方を理解する必要がある。理解するためには、学ばなくてはならず、本はそれを助けます。
そして本は、学ぶだけでなく、楽しみ、人を結び、知識や時代を未来へつなぐ。
そんなことを感じられるような少し大きな子どもたちにも、手にしてほしい絵本です。
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