ちいさな しげみの なかに、バッタが いっぴき かくれすんでいた。そこには、おそろしい ものたちが いて、バッタを たべてしまおうと ねらっていた。
だから、バッタは まいにち、びくびくしながら くらしていた。
しかし、バッタは こんなところで おびえながら いきていくのが、つくづく いやになった。
そして あるひ、バッタは けついした。ー本文より
決意したバッタは、敵に襲われるかもしれないことを承知の上で、大きな石の悠々とひなたぼっこをはじめます。
案の定、ヘビやカマキリに襲われそうになったバッタは・・・
バッタは、死にものぐるいでジャンプします。
ヘビをへこまし、カマキリをばらばらにし、クモの巣をめちゃくちゃにし、鳥にぶち当たり。
そして、力尽き、もうだめだと思った時、背中の羽に気がつきます。今まで隠れて暮らしていた時には使ったことのなかった、その4枚の羽を夢中で動かすと・・・
・ ・ ・
子どもたちには卒業という区切りがあり、否が応でも背中を押し、次の世界へと飛び立たせます。
けれど、人生の大半の岐路は、立つのは自分ひとり。自分で扉まで歩いていき、開き、一歩を踏み出さなければいけません。
勇気を出して扉に手をかけ、それでもまだ迷うのは、今のまま隠れて過ごしていても生きていけるから・・・外には怖いことやピンチが待ち受けていそうだから・・・そのピンチへの立ち向かいかたがわからないから・・・途中で力尽きてしまいそうだから・・・無様な飛び方を笑われそうだから・・・
この絵本は、思いつくかぎり、一番力強い絵本。そんな不安は、まとめて吹っ飛ばします。
自分の力で飛ぶことのよろこび。
とりあえず飛べば、なんとかなる。
これから一歩を踏み出そうとする人に、勇気をくれる1冊です。
【この絵本のこと】
「とべバッタ」
田島征三 作 偕成社
【どんな人におすすめ?】
読んであげるなら、3歳くらいから。
短い絵本なので、小さな子から楽しめます。たくさんの生き物がダイナミックに描かれ、次々に登場するので、生き物や自然が好きな子にもおすすめ。
単純にも読め、深くも読め。読む相手によって変わる懐の深い絵本。
高学年の読み聞かせでも、読みたい1冊です。
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