めったに風邪をひかない子だったので、風邪は、ひそかな憧れでした。
いちど、めずらしく熱をだし、ぼーっとしたあたまでトイレにいって、100人のこびとがトイレ掃除をしているのを、見たことがあります。
正確には、見た場面は覚えていないのだけど、すごくびっくりして、家族に助けを求めたことを、よく覚えているのです。
それ以来、熱とこびとはセットで、いい歳をしたおとなになった今でも、熱がでるとトイレのドアをあけるときには、淡い期待を寄せてしまうのです。
この絵本を読んでからは、なおさら・・・
ひさこちゃんは、お熱があって、今日はおとなしく寝ていなければなりません。
ずっとベッドで眠っているのは、すこしたいくつ。
おふとんを指でつまんで、お山をつくって遊んでいると・・・おふとんの山から、ちいさな声がきこえてきます。
あれ?
いつのまにか、おふとんに作った山が、雪山になって、ちいさな人たちが、たのしそうにスキーをしているのです!
山のふもとを見ると、丸太小屋が点々と並ぶ小さな村があって、村人のこびとたちは、遊んだり、雪かきをしたり、焚火を囲んだり。みんなそれぞれ、たのしそうに生活を営んでいるようです。
やがて、村の広場にあつまって、みんなそろってごはんのじかん。
その、あまりのたのしげようすに、ひさこちゃんがうふふって笑ってしまいます。
すると、鼻息で吹雪が!こびとたちは、やっと、ひさこちゃんに気がつきます。
そして、ひさこちゃんがお熱だとわかると、おじいちゃん先生の指揮のもと、みんなで力を合わせて、なにやら、大掛かりな装置を、作りはじめましたよ・・・
文字はほとんどなく、寝ているひさこちゃんから見たままの光景が、コマ割で描かれる絵本です。
アラリヤナー
スカラガッチャ スカラガッチャ
ワッシ ワッシ ヒヨメケレ
不思議なことばを話す、気のいいこびとたちが、手が届くくらい近くにいて、そのゆかいな熱気で、本の中はほっかほか。
数えきれないくらいの、たくさんのこびとが、生きて、動いて、話しているのだから、それはそれはにぎやかです。
コマのふちまで手書きの丁寧さや、すみずみまでの気配りとあそび心がうれしい。
巻末に、かけぶとん文庫所蔵の、あの装置の製法の手引書もついているんですよ。
・ ・ ・
風邪が流行っています。
どうぞ、お気をつけ下さいませ。
【この本のこと】
「おふとんのくにのこびとたち」
おちのりこ 作
でくねいく 絵
偕成社
【だれにおすすめ?】
読んで開けるなら、5歳くらいから
ですが、文字はほとんどなく、コマ割りになっているので、小さい子なら一緒に読む。少し大きくなったら、自分でめくってもとても楽しい絵本です。
本当に、細かく細かく、こびと一人一人の性格まで伝わるくらいに、とても丁寧に描かれ、何度開いても見飽きることはありません。
ありえないのに、矛盾のない、完璧なファンタジー絵本です。
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