彫刻家の舟越桂さんが、奥さんのために作った、絵本があります。
「リトル・ドラマー・ボーイ」という、クリスマスの歌からもらった風景を、見えたままに急いで描いたという、素朴な水彩画のちいさな絵本。
リトル・ドラマー・ボーイは、新しく生まれた、救い主と呼ばれる幼子を祝福しにいく、ちいさな男の子の歌です。
貧しく、贈り物にできるものを何も持たない男の子が、お祝いにたいこをたたくと、その赤ちゃんがほほ笑んでくれた、と。
pa-rum pum pum pum…
舟越さんが歌の中にみた男の子は、心細そうで、健気で、おだやかで。
帰り道の後ろ姿は、喜びと満足と誇りを、しっかりと語っています。
奥さまの手元にある実物は、紙を重ね、糸で綴り、肘当て用の赤い皮で表紙を貼ってあるそうです。
わたしたちが手にできるのは、クロス装で三方を金付され、けれども豪華や堂々というよりも慎ましい佇まいの、手のひらに収まる小さな本。
上製された本ですが、舟越さんの言葉もついて、とても丁寧に作られ、心のこもったすばらしい本です。
クリスマスには、自分のできる、1番の贈り物を。
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【この本のこと】
「Little Drummer Boy」
舟越桂 すえもりブックス (入手不可)
【だれにおすすめ?】
赤い箱に入り、金の箔押しでタイトルだけ書かれた、小さな絵本。
舟越桂さんのお姉さんであるすえもりブックスさんが手がけた装丁からは、家族の想いに寄り添い大切にする気持ちが伝わり、ひとつひとつ手作りされたような、心のこもった本になっています。
宝物にして、時々そっとひらきたいような、特別な本です。