子どもの頃、お母さんのお裁縫箱をのぞくのが、大好きでした。
丸まったハギレの奥に、小さいボタンがころがっていたり、めずらしい形のスパンコールがみつかったり、こんがらがった色とりどりの糸をほどいたり、キラキラのツブツブのついたまち針を、並べなおしたり。
西巻茅子さんの初めての絵本は、そんなお裁縫箱が舞台。
小さなボタンの、冒険物語です。
あこちゃんとなかよしの、うさぎのぬいぐるみのぴょんは、赤いボタンの目をつけています。
ある日、草むらで遊んでいると、ぴょんの目の赤いボタンがひとつ、とれてしまいました。
ころころころころ、ころがって、落っこちたところはボタンのくに。
糸巻きの木馬、針山のすべりだい、
リボンの川に、糸くずのジャングル。
遊園地のように、わくわくするところです。
お友だちになった5つ子の黄色いボタンたちと、夢中になって遊んでいた赤いボタンは、怖い黒いボタンのおじさんとぶつかって、追いかけられることに・・・
あぶないところで、やさしいおとなのボタンたちに助けられ、たどりついたボタンのくにのお城で、赤いボタンをまっていたのは、ボタンの王様に届いた、ぴょんからのおてがみでした。
・ ・ ・
小さなお裁縫箱の中には、物語のかけらみたいな、色とりどりの細々としたものがぎっしりと詰まっているのです。
西巻茅子さんのお母様は、お裁縫の仕事をされていたそうで、きっと、あちこちにコロコロ、ボタンが転がっていたのかな・・・
子どもの日々の空想がそのまま紡がれたような、小さなファンタジーです。
【この本のこと】
「ボタンのくに」
なかむらしげお 文
にしまきかやこ 絵
こぐま社
【だれにおすすめ?】
読んであげるなら、3、4歳くらいから。
大切なぬいぐるみや裁縫箱、子どもにとって身近なものから生まれたファンタジー。
黄色、ピンク、赤、水色。こどもがクレヨンで描いたような絵をカラーセパレーションで印刷した、淡くやさしい色彩が、不思議な世界にぴったりです。
幼稚園の頃から、ボタンやスパンコールをコツコツと集め、暇な時には針山の待ち針を並べ直していたわたしは、この絵本が本当に大好きでした。
42ページあり展開が多く、次々にいろんなことが起こるので、男の子だってたのしいです。
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