星は、手の届かないものの象徴として描かれることもありますが、いっぽうでは目指す先、希望を重ねるものでもあります。クリスマスの星ーキリストの誕生を告げて博士たちが目指したベツレヘムの星も、まさに希望。
すばらしい散歩でした!空はかぎりのない宝石店のようにきらめいていました。もう雪はふっていませんでした。どこの家にもクリスマス・ツリーがかがやいていました。
マルチンは立ちどまって空を指さしました。「ぼくたちがいま見る星の光は数千年もまえのものです。光線がぼくたちの目にとどくまでには、そんなに長い時間がかかります。たぶんこれらの星の大多数は、キリストのお生まれになる前に、消えてしまっているでしょう。しかし、その光はまだ旅をつづけています。それで、ぼくたちにとってはまだ光っているのです。じっさいは、とっくに、つめたく暗くなっているのですけれど」
「飛ぶ教室」より
クリスマスがせまる寄宿学校で過ごす、5人の少年のドラマを描いた「飛ぶ教室」。
1933年、ヒトラーが政権をにぎった年にドイツで出版されたこの「本式のクリスマス物語」(本文より)には、知恵と勇気、そして信じる心や思いやりや友情があれば、自分もまわりも幸せにすることができる、という強いメッセージがこめられています。
主人公の少年たち、そして寄り添う大人たち、みんなそれぞれの事情を抱えながら、正義とプライドを持ちまっすぐに生きていて、その健気さとかっこよさにしびれっぱなし。途中、いくつもの困難を乗り越えながら、ラストに見上げた空にすべる流れ星まで駆け登っていきます。
最後のシーン、先生の粋な計らいにより両親とクリスマスを過ごしているマルチンが見上げた空。この幸福感は格別です。
星に希望を重ねて。
今、そこにある光で、幸福で胸をいっぱいにして。
よいクリスマスを♪
・・・・・・・・・・