おつきさまが、まるく、きれいな夜。
かめの親子は、お弁当をリュックにつめて、水筒をさげて、おつきみピクニックにでかけます。
カサッコソッ カサッコソッ
かめの親子が、落ち葉でふかふかの道を歩いていると、お友だちのはりねずみの親子や、ももんがの親子が、追い越していきます。
もちろん、かめの親子は、ゆっくりゆっくり。
途中、ふくろうにひやっとしながらも、無事に、池の広場につきました。広場では、先にやってきた動物たちが、たくさん、思い思いに、たのしそうに、おつきみをしています。
それは、とてものどかで、平和で、おだやかな気持ちになる、光景。
みんなで、月あかりに照られたお弁当を食べる。それだけでも、しあわせな気持ちで、本を閉じられます。
でも、この絵本は、まだ、すこしだけ、続きがあるのです。
かめのお母さんは、まんまるの月を眺めながら、遠くに住む友だち、砂漠のかめさんにも、月あかりは届いているかな、と、思います。
そして、ちょうどその頃、砂漠のかめさんも、友だちと一緒に月を眺めながら、森のかめさんを思い出し、お手紙を書いて、いたのでした。
そして、数日後・・・
・ ・ ・
ふだんはまっくらで、すこしよそよそしい夜が、明るく親しみやすくなる、お月見の日の、特別なワクワク。
それだけでなく、月を見上げて、同じ空の下にいるだれか・・・や、見知らぬたくさんの人に想いを馳せることのあたたかさや、よろこびが、さりげなく描かれています。
【この本のこと】
「おつきみピクニック」
いちかわなつこ 作 ほるぷ出版
【だれにおすすめ?】
読んであげるなら、3歳くらいから。
いちかわなつこさんの絵本は、表情や、背景のこまごましたところまで、とてもかわいいので、少し大きくなった子にも楽しいです。
ただかわいらしいだけでなく、小ネタになっているのではなく、全体のあたたかな雰囲気を作っていて、いいなあと、思っています。
【今日は何の日?】
月を見て、誰かを想う。
満月を、そのために見上げる人も、きっと、いるでしょう。万葉の時代から受け継ぐ、わたしたちの、大切な感覚です。
月の絵本はたくさんありますが、そのことに触れられているものは、あまりないと思います。ほのぼのとかわいらしい中に、それがきちんと描かれていることが、うれしいです。
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