氷のとけた、たんぼのあぜで、やまあかがえるたちが、うたいはじめました。
うたの好きな女神さまは、かえるたちのうたが聞こえると、あたたかい雨になって、空からおりてくるのです。
女神さまが、やわらかい手でみんなをなで、しっとりとぬらし、草木がくすぐったくてくすくす笑うと、あたらしい命が生まれます。
そうして、春がやってきます。
春のまんなかのあたたかい日の土手では、もぐらたちが、「たんぽぽ探査隊」を飛ばしています。(もぐらたちは、それで、世界中の情報をキャッチしているのです。まっすぐにのびたくきは、アンテナなんだって!)
桜の花がおわって、あたらしい緑の季節になる最初の夜には、魔女たちが夜店をだして、夢のような品ものが、たくさん、並びます。
青い空の初夏の朝早くには、野菜の花が、ラッパをならします。
ある夏の夜に、500年に一度の、きつね座流星群があります。
収穫の季節には、こねずみたちのどんぐりまつりがあります。
冬のはじめの森で、小道にはったクモの糸をくぐると、そこは、あかり屋。歌声であかりがつく、きのこのランプを売っています。
そして、空気のきりっとした、冬の日。ひと晩で、森じゅうの景色を、まるきりかえてしまう、ふしぎやさんが、やってきます・・・
・ ・ ・
春から、はじまる。
そして季節は、途切れることなく、紡がれていき、どの瞬間にも、小さな物語が、ちんまり、ちんまりと広がっています。
耳をすまし、ひとつ、ひとつ、そっと集めて、編まれた、物語集です。
【この本のこと】
「ふしぎやさん」
林原玉枝 作
はらだたけひで 絵
アリス館
【だれにおすすめ?】
自分で読むなら、2、3年生くらいから。
1編は短いので、5歳くらいから読んであげることもできますが、この世界観を堪能するには、もう少しかな・・と思います。
季節をあらためて感じさせてくれるので、おとなの人にも、おすすめ。
カラーの挿絵も、美しく、物語にぴったりです。
これより先に出ている「森のお店やさん」も、合わせてどうぞ♪
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