春のおとなりが、いちばん寒いなんて・・・
もう、あとすこしだけ先にみえるはずの春を待つあいだ、閉ざされた季節にだけみえる世界を、堪能しましょう。
ね、もう、あとすこしだけ。
さむい、さむい、冬の日の午後のことです。
空も景色も灰色がかった、
さむい午後。
そとのお庭で、ひとりでお人形あそびをしていたベスは、いっしょにあそぶ、ともだちがほしいなあ・・・と、思っていました。
人形とふたりで、ささやかなパーティーをひらこうとしたとき、空から、パラン!と、ことりが落ちてきました。
ことりは、ベラといいました。
南の国への旅のしたくで、素敵なものをたくさんつめていたベラのちいさな旅行カバンからは、色とりどりの美しいものが、次々にでてきます。
テーブルクロスにぴったりの大きなショール
お茶のはいったポット、
きれいなうつわに
焼きたてホカホカの丸いパン・・・
たのしいおしゃべりに、
湯気のたつおいしいたべもの。
そして、まるで雪の精みたいに次々にあらわれ、くるくると動き回るかわったものたちも加わって、さあ、つめたくて、あたたかい雪の中のパーティーのはじまりです♪
・ ・ ・
雪のつもる、うすぐらい午後。
ベスのほかは、みんな、きっと、あたたかで明るい、おうちの中にいるのです。
ずっと後になって、季節がかわったときに、あれは夢だったのかな・・・と思うような、ちょっと不思議なことが起こるのって、たいていそんなときなんですよね。
あたらしい出会いのあふれる春を待つあいだに起きた、鮮やかな夢みたいな、できごとのおはなしです。
【この本のこと】
「ベスとベラ」
アイリーン・ハース 作 たがきょうこ 訳
福音館書店 (品切れ)
【だれにおすすめ?】
読んであげるなら、5歳くらいから
薄暗い風景の中に浮かぶ、色鮮やかな出来事。
新しい出会いが待つ、ラストもすてきです。
夢?現実?
ハースの絵本の、現実と空想の境目のないファンタジーは、不思議なことやきれいなものが好きな子たちがよろこんでくれるのですが、今、出版されているものがなくて悲しい。
空想好きな子、ぜひ読んでみて欲しいです。
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