【12月11日】ちいさなろば

たくさんの、色とりどりのクリスマスの絵本のなかで、だからこそとても目をひく、あずき色の表紙。

ひらくと、水彩で描かれた冬景色が広がり・・・

ちいさなろばのさみしさ、おどろき、よろこびが、しんしんと伝わり、つもり、イメージのかけらや、たくさんの想いが夢のように淡く、こころにのこります。

くさはらの中に、ちいさなかこいがあって、ひとりぼっちの、ちいさな、くろい、ろばがいました。

かこいの中をかけまわって、「イーヨウ!」とないても、「イーヨウ!」とこたえてくれる友だちは、いないのです。

ろばは、クリスマスのことも、サンタクロースのことも、知りませんでした。

けれど、通りかかった女の子に、はじめて教えてもらったその夜。ちいさなろばは、足をいためたトナカイのかわりに、サンタクロースの手伝いをすることに、なったのです。

無事につとめを終え、くたくたになって眠りについた彼に、サンタクロースがくれたのものとは・・・

サンタクロースは、だれにでも、ほんとうにぴったりのプレゼントをくれる。

ちいさなろばだって、満足でこころをいっぱいにし、胸をはることができる。

そんなあたりまえのことを、あたりまえに信じている子どもたちにとって、これほど、気持ちを満たしてくれる絵本は、ないのではないでしょうか。

静かで、おだやかで、美しくて、あたたかい、クリスマスのものがたり。

奇跡って、こういう風におきて、こんな風に、語られるものなんだよ。

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わたしが、子どものころに読んでもらったクリスマスの絵本の中でも、とても印象深く、こころに残っていた1冊です。

すべての場面が、静かなのに、ドラマチック。

声にされるために生まれたような石井桃子さんの訳のテキストは、読んでくれた人の声と、その時間のあたたかさと一緒に、きざまれます。

今も、たくさんの大好きなクリスマス絵本の中で、そっと、特別におもっている、絵本です。

【この本のこと】

「ちいさなろば」
ルース・エインズワース 作
酒井信義 画
石井桃子 訳
福音館書店

【だれにおすすめ?】

読んであげるなら、3歳くらいから。

街にも、書店にも、まぶしいくらいにきれいな色が並ぶこの季節に、この佇まいは、目を引きます。

表紙も、内容も、派手さはなく、けれど一つ一つのエピソードが、こころに刻まれます。

我が家には、100冊以上のクリスマスの絵本がありますが、娘たちも、もう何年もこの絵本をよく読んでいますし、ことり文庫でもおすすめすると、気に入ってくださるお母さんが多いです。