子どもたちにとって、大切なのは
いかに長くサンタクロースを信じているか・・・
ということではないと、思っています
ー 子どもたちは、遅かれ早かれ、サンタクロースが本当はだれかを知る。知ってしまえば、そのこと自体は他愛のないこととして片付けられてしまうだろう。しかし、幼い日に、心からサンタクロースを信じることは、その人の中に、信じるという能力を養う。わたしたちは、サンタクロースその人の重要さのためでなく、サンタクロースが子どもの心に働きかけて生みだすこの能力ゆえに、サンタクロースをもっと大事にしなければいけない
(中略)
心の中に、ひとたびサンタクロースを住まわせた子は、心の中に、サンタクロースを収容する空間をつくりあげている。サンタクロースその人は、いつかその子の心の外へ出ていってしまうだろう。だが、サンタクロースが占めていた心の空間は、その子の中に残る。その空間がある限り、人は成長に従ってサンタクロースに代わる新しい住人を、ここに迎えいれることができる。
「サンタクロースの部屋」より
東京子ども図書館の理事もつとめた松岡享子さんが、長年の児童図書館員や文庫をひらいた経験から、子どもと本について、思うこと、伝えたいこと。
子どもの本を通して、それを受けとる子どもたちの健やかな成長への愛しみと切なる願いがこめられています。
子どもの本に関わる仕事をしている人たちだけでなく、ぜひ、お母さんたちにも手にしてもらいたいことばたち。
上に引用している言葉は、著者の前書きにきにあるもので、アメリカの児童文学評論誌に掲載されていた言葉だそうです。
この文章のサンタクロースは、魔法使いや妖精、妖怪、おまじないなど、なんにでもかえることができます。
未知のもの、目に見えないものに心を躍らせ、信じる力ー
つまり、想像力、と言い換えていいと思いますが、その、人生を豊かにするために絶対に必要な力が、今、養われているのです。
人を愛すること
平和を願うこと
そんな、大切な精神も、
サンタクロースが残してくれる贈りものなのかもしれません。
・ ・ ・
【この本のこと】
「サンタクロースの部屋」
松岡享子 著 こぐま社
【だれにおすすめ?】
子どもの本に携わる仕事をしている人
これからする人
そして、子どもを育てるお母さんたちにも
ぜひ、読んでもらいたい本。
ここで紹介したのは、冒頭数ページの
端書きの部分で、
残り200ページ近くにも、ぎっしりと
読むべきことがつまっています。
ことり文庫にとっても、大切な指針のひとつです。