おおきなもののすきなおうさま

 

ー むかし ある ところに、
  おおきな ものの すきな
  おうさまが いらっしゃいました。

  おうさまは、なにしろ
  おおきな ものが すきでしたから、
  やねよりも たかい べっどで
  おめざめに なると、
  ぷーるのような せんめんきで
  かおを あらい、
  にわのような ひろい たおるで
  かおを ふいて、
  やっと 一にちが はじまるのでした。

           ー本文より

カチカチとおおきな音で時を刻む、おおきな時計に、
滑車じかけでつられているおおきなスプーンとフォーク。
門にもはいらない、おおきな板チョコレートに、
おおきな釘抜きを利用したおおきなとりかご・・

王さまのお望みは、
とても贅沢で、ちょっと滑稽。

だって
大きな時計でも、小さな時計でも、
刻む時間は同じ。

どんなに大きなお皿に盛っても、
王さまのたべられる量は、ほんのこれっぽっち。

大きな鳥かごにはいる鳥だって、ふつうとかわらないのですもの。
(これは、じきに、すこし役に立ちましたけれどね。)

 

でも、王さまは、ある日、また
たいへんなことをおもいつきます。

庭をほって、大きな池をつくり、
その土で大きなうえきばちを作るというものです。

そして、完成した、お城よりも大きなうえきばちに、
チューリップの球根をひとつ、うめました・・・

・     ・     ・

子どもの頃、はじめて覚えた花の名前は、
たぶん、チューリップ。

今も、春がくるたびに
あの頃と同じようすで佇むチューリップの、
頼もしく、愛おしいこと。

芽を出したチューリップの、ありのままの大きさに
素直におどろく王さまも、滑稽ながらにくめません。

きっと、王さまは今ごろもまた、
けらいたちに支えられながら、何かあたらしい「おおきなもの」を
考えついているのでしょうね。

そして、チューリップはチューリップで、愛でるのでしょう。

一生懸命にやれば作れるものと
変えることのできないものと。

人間だって、柔軟さと頑固さを、バランスよく持っていますもんね。

 

【この本のこと】

「おおきなもののすきなおうさま」
安野光雅 作 講談社

【だれにおすすめ?】

読んであげるなら、4、5歳くらいから

物語の楽しさもさることながら・・・

王さまのまわりの大きなものは、
なんとなくではなく
きちんと実用的に精巧に描かれ、
その仕組みも見応えがあります。

王さまのまわりの人たちは、
やれやれ、という表情は浮かべながらも
決してイヤイヤな感じではなく、
一生懸命なその様子をみるのもたのしい。

それに、誰でも知っている花であるチューリップが
出てくる絵本って、意外に少ないんです。

春に読みたい、絵本でもあります。

 



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