ヴァン・ゴッホ・カフェ

 

若い頃は、まだ、わかっていませんでした。

めったにおきない、奇跡のようなことを
だれかが起こしてくれるのを、まっていた頃。

でも、いまは、ヴァン・ゴッホ・カフェの魔法がわかります。

わたしも、自分で魔法を見つけられるかもしれないこと、
もしかしたら、おこすこともできるかも、しれないことが、わかります。

いちばん大切にしたい魔法は
空をとんだり、呪文を唱えたりすることではなくて、
たとえば、赤ちゃんの笑い声が音楽にきこえるようなことだと、
わかるようになりました。

ヴァン・ゴッホ・カフェは
むかし劇場だった建物のかたすみにあります。

持ち主は、マークという若い男で
むすめのクララが、手伝いをしています。

ヴァン・ゴッホ・カフェの魔法は、
壁にかかった「愛犬、大歓迎」の札からも
パイの回転皿からも
女性用のトイレに描いたアジサイからも
いつも同じ曲の流れる、ちいさなレコードプレーヤーからも、
やってきます。

ヴァン・ゴッホ・カフェでは、みんながその魔法に気づき、
気づいたみんなが、魔法の影響をうけるのです。

 

魔法は、たとえばこんな風におこります。

ある日、窓のそとに1匹のオポッサムがあらわれ、
日に日に見にくる人がふえ、
見にくる人たちが仲良くなり、
ほかの動物たちも食べ物にありつき、
そのことが、ひとりの人の人生をかえること。

いなずまがひかり、
マークの料理が完璧になり、
生まれた余裕で詩に夢中になり、
その詩がお客さんにに小さな幸せをはこび、
(または、お客さんが詩の中に自分の小さな幸せをみつけ)
そのことが、少年と猫をすくうこと。

 

ヴァン・ゴッホ・カフェの魔法は、
魔法を受けとるひとりだけの物語では、ありません。

魔法は、だれかの気持ちの宿っているところなら、
どこからでもやってきて、人から人へ、つながっていき、
必要としている人のところに、運ばれます。

ふるさとの村を離れようとしていた男の人に、
吹雪にまきこまれた、バスに乗っていた子どもたちに。

そして、クリスマスのころに
古い友人と待ち合わせをした、昔の映画のスターに・・・

 

それは、だれかひとりのために唱える秘密の呪文よりも
もっと、もっと、ドラマチックです。

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【この本のこと】

「ヴァン・ゴッホ・カフェ」
シンシア・ライラント 作 中村妙子 訳
ささめやゆき 絵 偕成社

【だれにおすすめ?】

短い物語で、高学年や中学生から読むことはできます

10代でも楽しむ子はもちろんいると思いますが、
年を重ねてから読むと、より響きます

ゆっくりとお茶をしながら、ゆっくりと読みたい
少しだけ不思議な、魔法のお話



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