にぐるまひいて

 

ー10月 とうさんは にぐるまに うしを つないだ。
 それから うちじゅう みんなで
 この いちねんかんに みんなが つくり そだてたものを
 なにもかも にぐるまに つみこんだ。

            (本文より)

春に刈り取った、ひつじの毛をつめたふくろ、
ひつじの毛を、母さんが紡いで織ったショール、
母さんの紡いだ糸で、娘が編んだ手袋、
みんなで作ったろうそく、
亜麻から育てて仕上げたリンネル、
父さんが切り出した屋根板、
息子がナイフで作った白樺のほうき、
畑で掘ったじゃがいも、
りんご、はちみつ、蜂の巣、
樹液を煮詰めてとったかえでの砂糖、がちょうの羽根。

それをみんな、荷車に乗せ、父さんはひとり、10日かかりで市場へ向かう。

そこで、持ってきたものをみんなー詰めてきた箱や樽、引いてきた荷車や牛までも、売り、手にしたお金で、外国製の刺繍針や、お鍋や、大型ナイフを家族のおみやげにもとめ、家路につく。

そして、家族がそれぞれのおみやげを手に、また、はじまる、1年間。

また暮らすために、1年を暮らす、家族の姿。

19世紀はじめの、ニューイングランド地方を舞台にした、美しくゆるやかな輪を描いて、どこまでも続く物語です。

・     ・     ・

生きていくことに、もっともらしい意味なんていらないし、変動するしあわせは、ときどき、足かせになる。

生きることは、日々を暮らすこと。

ただ、こんな風に、この1日が、1年後の今日に、つながっているとたしかに感じられたら、本当は、それだけで、いいのだと思います。

 

【この本のこと】

「にぐるまひいて」
ドナルド・ホール 文
バーバラ・クーニー 絵
もきかずこ 訳
ほるぷ出版

【だれにおすすめ?】

読んであげるなら、4歳くらいから。

何かが起こるわけではなく、ただたんたんと暮らしが描かれます。

けれど、一家の慎ましい暮らしはどれもー糸を紡ぐことも、ナイフでほうきを作ることも、楓の樹液を煮詰めることも、羊の毛をかることも、子どもたちには珍しく、新鮮に映りますし、丁寧に描かれたクーニーの絵は、何度見ても眺めたりません。

暮らしを営むことを楽しむおとなの人にも、とてもおすすめです。

 



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